2022年12月23日金曜日

第3173話 時代(とき)が止まった よな中華

日暮里で乗った京成本線を堀切菖蒲園で降りた。
菖蒲など咲いてるはずもない。
世の中、菖蒲湯じゃなくて柚子湯の季節だ。
駅前の川の手通りを北に向かう。
道路の両側にやたらと中華料理屋が多い。

過去に何軒か訪れたが初めての「三河屋」へ。
ちょっと見、界隈最古と思われた。
酒屋みたいな屋号だが、う~ん、雰囲気あるなァ。
畳敷きの小上がりまであるヨ。

こうなると美味い不味いは二の次、
この空間に身を置けるシアワセを噛みしめたい。
接客は丸刈りのアンちゃん、黒ラベルを通し、
「ちょっと待ってネ」ー
一声掛けてメニューを開く。
ずいぶん若いな、跡継ぎの倅だネたぶん。

もう1軒回るつもりなので
ストマック・キャパに余裕を持たせたい。
かと言って餃子・焼売では味気ない。
ん? 豚ロースの香り揚げか、いってみよう。

厨房にも丸刈りの坊主が見える、しかも二人だ。
はは~ん、これは三兄弟だな、よく似てるわ。
同じ年恰好だからひょっとして三つ子かも?

豚ロースは生姜焼き用が5枚。
小麦粉を軽くはたいて揚げてある。
ガーリック・チップが散らされ、
繊切りキャベツには玉ねぎと水菜も。
ビールにピッタリの一皿だった。

会計時(1050円)、女将さんに訊ねた。
「お店は長いことされてるんでしょう?」
「ええ、昭和3年創業です」
「3年? 30年じゃなくて?
 すると今は3代目くらいですか?」
「4代目です」
「あの3人は息子さん?」
「ホホホ。いいえ、
 近所の中学生の職場実習なんです」
「エエ~ッ! そんなのあるんすか?」
「ちょうど今日が最終日になります」

中学生の職場実習なんて初耳もいいところだ。
世の中変わったんだねェ。
「お店も地域に貢献してますネ。
 どうもごちそうさま」
「ええ、そうだといいんですけど。
 ありがとうございます、またお寄り下さい」

明るい陽射しの下、次は何処へ行こうか。
手びさしで南の空を見上げた。

「三河屋」
 東京都葛飾区堀切4-57-15
 03-3602-1579