2023年11月27日月曜日

第3414話 目黒の菜館 酢豚が美味し

目黒駅前からなだらかに続く権之助坂。
ほぼ下り切って目黒川に架かる目黒新橋の手前に
1軒の菜館を見つけたのはひと月前のこと。
店頭のフォトメニューの上ロース黒酢豚が
やけに美味しそうだった。

気になってはいたものの、
なかなか機会に恵まれなかった。
それがようやく実現。
意気揚々と坂を下っていった。

その名も「目黒菜館」に入店すると
意外にかなりコンパクト。
勝手に大箱と思い込んでいたからネ。
サッポロ赤星の中瓶と
狙いすました黒酢豚を発注。
文学青年ならここで
スタンダールの「赤と黒」を連想するところだ。

ところが昭和歌謡大好き人間の
オッサンは違った。
耳朶の奥で鳴り響いたのは
鶴田浩二の甘い歌声である。

♪ 夢をなくした 奈落の底で
  何をあえぐか 影法師
  カルタと酒に ただれた胸に
  なんで住めよか なんで住めよか 
  あヽ あの人が     ♪
   (作詞:宮川哲夫)

♪ 赤と黒とのドレスの渦に
  ナイトクラブの夜は更ける ♪

そう始まる2番がそのまんまだけれど
より優れた歌詞の1番を紹介した。
「赤と黒のブルース」は1955年のリリース。
この曲も大ヒットしたがこの年、
日本列島を席巻したのは
島倉千代子「この世の花」と
春日八郎「別れの一本杉」であった。

それはそれとして「目黒菜館」の昼下がり。
ビールのお通し(380円+)の
たたききゅうり&蒸し鶏はどちらもなかなか。
これならチャージされても文句は出ない。

黒酢豚も好かった。
上ロースたっぷりに玉ねぎと緑&赤ピーマンが少々。
濃い目の味付けにつき、ライスが欲しくなるけど、
ここはがまんして中瓶を2本飲んだ。

切盛りは中国人のオジさんとオバちゃん。
かれこれ15年のつき合いだというが夫婦ではない。
家庭のあるシェフは重慶出身。
独身の女将はハルビン生まれで二人の会話は北京語。
客が引けたのをいいことにいろんな話を聞かされる。
こういう話好きのチャイナオバちゃんも珍しいわい。
支払いは3500円で小銭のオツリをもらった。

さて、もう1軒は世田谷・尾山台の予定ながら
風が出てきて肌寒いし、雲ゆきもあやしい。
菜館の前で思案投げ首の巻である。

「目黒菜館」
 東京都目黒区下目黒1-5-16
 03-3779-4655