2024年7月4日木曜日

第3572話 こち亀タウンの一番星 (その1)

宵闇せまって現れたのは
葛飾区のこち亀タウン・亀有。
今宵の相方はのみとも・S織だ。
「お久しぶりね」
「ああ、しばらくだネ」
かねてより狙いの「いちふじ」に向かう。

未踏の和食店は亀戸南口のゆうろーどを
ちょいと曲がったところにある。
予約は開店と同時の17時半。
その際に当店の名物、
あぶらぼうずをお願いしてあった。

刺身やしゃぶしゃぶが理想なれど
キープされていたのは西京漬けのみ。
それでも極めて稀少なサカナにつき、
心に満足感が宿った。

ドライ中瓶を注ぎ合ってグラスをカチン。
三点盛りの突き出しは
枝豆、きんとき鯛昆布巻き、磯つぶ貝酒煮。
いずれも上々のスターターである。

下唇が出っ張って素っ頓狂な顔立ちをした、
きんとき鯛は上品な白身。
つぶ貝は肝がバツのグンであった。
たったこれだけで此の店の実力を
推しはかることはいとも簡単。

お次は𩺊(アラ)の刺身。
薄紅色の薄造りが美しい。
繊細な旨みが舌の上に拡がり、
心なしか相方のまなざしもウットリ。
ふむ、よくよく見れば
それなりに色っぽいじゃないかー。

生とり貝の刺身が追いかける。
この貝は下手に茹でるとゴムになる。
生命力の薄い貝は生に限るけれど、
めったにお目に掛かることができない。

鱧(はも)の落としを所望。
当然のように生わさびに加え、
必要不可欠な梅肉が添えられる。
とてもけっこうなれど、
アラと生トリの強力タッグには敵わない。

いよいよ本日の主役にして真打ち、
あぶらぼうずのお出ましである。
1人前2切れなので2人前をお願いした。
焼き始める前の串打ち状態を披露してもらい、
否が応にも胸の高鳴りを覚えたのでした。

=つづく=