2024年7月23日火曜日

第3585話 「銀幕の越路吹雪」さらに2作 (その1)

神保町シアターで上映中の「銀幕の越路吹雪」。
全4作のうち残りの2作を観てきた。
1本目は「吹けよ春風」(1953)、
監督は八千草薫の旦那だった谷口千吉。
主演の三船敏郎はタクシーの運転手。
さまざまな乗客とのふれあいを描いた、
セミ・オムニバス仕立てである。

いきなり岡田茉莉子と小泉博の痴話げんかと
車内ラブシーンで始まる。
ホンのチョイ役で観ている方は
完全な肩透かし状態。
何も売れてる二人を使わなくともー。

家出娘の青山京子(小林旭夫人)が可愛い。
東京駅丸ノ内南口のホールで
ヘンなオッサンにまとわりつかれ、
連れていかれそうになるところを
三船が助けるのだが
実はこれとまったく同じシーンを
自ら演じたことがあった。
いえ、J.C.がネ。

あれは1970年、大学に入学した年で
丸ノ内南口の東京ステーションホテルに
かつてあったコーヒーショップでバイトの日々。
閉店後、同僚のGFと飲みに行く約束だった。

ホールの柱の陰に身を隠して眼だけを出し、
待ち構えてあとから来る彼女を
「ワッ!」と驚かせようと潜んでいた。
すると、後ろから肩をポンポン。
振り返れば、制服姿の巡査と来たもんだ。
かくかくしかじかと弁明するところへ
ほどなく相方が現れ、事なきを得た次第也。

ファンにもみくちゃにされる、
人気女優の越路吹雪を日劇前で拾い、
そのまま外苑のイチョウ並木を疾走。
映画「黄色いリボン」の主題歌を三船が
替え歌にしたメモを越路が見て歌い出す。
しまいにゃ三船も参加してデュエット。
彼の歌声を聴いたのはのは最初で最後。

映画「男はつらいよ」の撮影の合間に
妹・さくら役の倍賞千恵子が口ずさむ、
「幸せの黄色いリボン」の歌詞の意味を
山田洋次監督が聞き及び、
「幸せの黄色いハンカチ」が
生まれたというのは有名な逸話である。

刑期を終えた夫・山村聰を迎える妻・山根寿子。
この夫婦と幼子にはホロリとさせられた。
人情味にあふれ、心に残る1作でありました。

=つづく=