2024年7月11日木曜日

第3577話 特集・越路吹雪 始まる

旧臘より、行きつけとなった神保町シアター。
6月末からの新シリーズは
「忘れられない 90年代映画たち」。
「就職戦線異状なし」「乳房」「八月の狂詩曲」
「うなぎ」「鉄道員」などが順次、上映される。

ところがJ.C.の興味は極めて薄い。
もっと古い50、60、70年代の映画を好むため、
たかだか30年前の90年代では
まだまだ ”若造” という印象を禁じ得ない。

代わりに並行して催されている、
「生誕100年記念 銀幕の越路吹雪」には
心をわし掴みにされている。
4週で4本、それも毎日昼間の1回限りだが
そのすべてを観るつもりだ。

さっそく前半の2本を鑑賞してきた。
「プーサン」(1953)は市川崑監督作品。
日本映画界きっての怪優、伊藤雄之助が主演。
J.C.は今まで目にしてきたすべての日本人で
顔が一番長いのはこの人だと確信している。

黒澤・三船コンビの最高傑作「椿三十郎」で
城代家老の伊藤が自らつぶやく。
「乗った人より馬は丸顔」
加山雄三はじめ、若侍の失笑を大いに買った。

それはそれとして
横山泰三の漫画を原作とする、
「プーサン」は越路の魅力いっぱい。
この人の素顔をとっくり眺めたのは
たぶん初めてじゃないかな?

お次は「恋化粧」(’55)。
監督の本田猪四郎は東宝の特撮映画を数多く
手掛けた人で印象深いのは第一に「モスラ」だ。

池辺良&岡田茉莉子の悲恋物語は柳橋が舞台。
越路はその花街の売れっ子芸者である。
柳橋を舞台とした映画は
成瀬巳喜男がメガホンをとった、
「流れる」(’56)がつとに有名ながら
当作もなかなかに楽しませてくれる。

実はこの作品、最大の目当ては
越路の下で働く半玉役の青山京子。
市川雷蔵主演の「弁天小僧」('58)で
虜になって以来、ファンを通している。
4年前に亡くなったが
何を隠そう彼女こそ、小林旭夫人である。

10年あまり暮した柳橋。
胸に迫りくるものが随所にありました。
「恋化粧」は明日までの上映。
13日からは「吹けよ春風」(’53)、
20日から「男嫌い」(’64)が
それぞれ1週間づつ、かかります。