2011年7月5日火曜日

第89話 大塚は底なし沼 (その2)

昨日はかつての花街・大塚で4軒はしごしたハナシ。
まるで底なし沼にハマッたが如くだ。
都内でも浅草と並び、はしご率がめっぽう高いのがこの地。
後日、何度か出没しているが
今日もまた底なし沼事件の顛末である。

その夜は東京メトロ丸の内線・茗荷谷で下車。
新大塚に向かって歩み、
1軒目は有形文化財に推したいくらいの「柄沢商店」だ。
腰掛け可能ながら、基本は立ち飲みの角打ちで
ふらりと椿三十郎が現れてもシックリくる雰囲気がある。
独りで客をケアする女将はおっとりとした性格、
注文時のみ応対して、あとはのん気に茶の間でTVを観ている。
都内に何軒もある角打ちだが、こんなのはこの店だけだ。

サッポロ黒ラベルの大瓶に”うまかつ”なる得体の知れないつまみ。
パン粉の厚いカツの中身は薄い合成肉みたいなヤツで
角打ちにはお似合いの酒の友といえよう。
だが、読者の方々にはおすすめしない。
第一感は大人の駄菓子そのものだもの。

2軒目はかねて狙いを定めていた「大雅」なる中華料理店。
上野と大塚を結ぶバスに乗った際、車窓から見掛けた店だ。
ちょっと見、どことなくおいしそうな気配がした。
春巻と穴子の辛子炒めで紹興酒を飲んだが
穴子の鮮度に疑問符が付き、アテがはずれた恰好、
どうも最近、目利きの力が落ちている。

失敗したら長居は無用。
そのまま千川通りを直進して大塚のフトコロに飛び込む。
となれば、今宵も「江戸一」であろう。
この日は〆さばを肴に真澄を常温で2杯やった。
刺身はまぐろ・かつお・すずき・白いか・とり貝と揃っていたが
何となく酢の利いたものが食べたかった。
小肌か酢あじがあれば、そっちにするところなれど、
〆さばで折り合いをつけた次第だ。

いつ訪れても「江戸一」は満席である。
大女将をはじめ、接客の女性たちがあわてず騒がず、
常に落ち着いた応対ぶり。
この空間に身を置くだけで
幸せを感じるオジさんたちが夜な夜な参集してくる。
客の喫煙率の高さがネックだが、さほど気にならない。
何せ大女将自身がスモーカー、
店内禁煙のお達しなど、彼女の目の黒いうちに出るはずもない。

「江戸一」に寄って「富久晴」を素通りするのは片手落ち。
それじゃ仁義にならないと4軒目は大塚随一の焼きとんだ。
この夜はカミさんに任せっきりで
しばらく姿を見せなかった店主が
殊勝にも焼き台に貼り付いて串をあやつっている。
オヤジの復活に伴い、今度はカミさんの姿が消えた。
夫婦並び立っているところを見たことがない。

なぜか大塚はキリンビールの天下で
行きつけの2軒がともにそうだ。
ラガー大瓶を2本飲み、串は5本だったかな?
コブクロが売り切れだったような記憶がうっすらと・・・。

千鳥足で町にサヨナラ。
再び大塚の底なし沼で沈没しかかった。
まったく、アホでんなァ。

「柄沢商店」
 東京都文京区小石川5-41-9
 03-3811-7380

「大雅」
 東京都文京区千石3-1-1
 03-3942-2518

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