2011年7月12日火曜日

第94話 スタミナはつけたけど・・・ (その1)

豚や鶏の内臓(モツ類)に目がない。
豚ならさしずめシロ・レバ・カシラ、
鶏はセセリ・ハツ・レバが好みだ。
殊に鶏の場合、凝った焼き鳥店の中には
背肝・アズキ・チョウチン・ボンジリなど、
珍しい部位も揃っていて楽しませてくれる。

これが牛となると繊細さを失うせいか、
豚・鶏ほどの魅力を感じない。
焼肉店では仲間に合わせて
タン・ミノ・ホルモンあたりをつき合うのだが
たまに上等のホルモンに出会うのがせいぜいだ。
業者間では内臓にくくられるハラミ(横隔膜)は
大好きながら、あれをモツとは認めがたい気がする。

ひかりTVのナショナル・ジオグラフィックで
「最強の捕食者 チーター」を観た。
獲物を狩るときのトップスピードが時速120キロに達し、
2度に1度は狙った相手を仕留めるという。
ただし、そのうち半分はライオンやハイエナに横取りされるから
”地上最速”の生きものは”地上最強”とは言えない。

母チーターが倒した獲物に群がる子どもたちは
例外なく内臓から食べ始める。
やれロースだ、ほれカルビだと、
目の色変えるのはどうやら人間だけのようだ。

5月中旬の日曜日、松戸市・八柱にて墓参。
その脚で足立区・北千住にやって来た。
比較的出没率の高い街である。
なじみの「大はし」や「千住の永見」ではなく、
新規開拓を試みるのがこの日の狙い。
別段、居酒屋に絞ったわけではないが
結局、選んだのは「MASUMASU」なる居酒屋。
店先の品書きを吟味して決断した。
さして広くはないものの、けして狭くはない北千住、
あちこちほっつき歩いた挙句、
入店したのは駅から徒歩1~2分の至近であった。

立て混む店内を見渡し、
カウンターに空席を見つけて落ち着く。
突き出しの小冷奴と鳥皮マヨに気落ちした。
先行きあまり期待できそうにない。
でも生ビールの旨さだけは格別。

墓前に香華を手向け、掃き清める程度なら
さほどわずらわされることもないが
生垣の剪定(せんてい)、雑草の駆除はいささか大儀。
しかし作業中もそのあとも
清涼飲料水には目もくれず、グッとガマンの子、
もとい、ズッとガマンのオヤジであった。
すべてはそののち待っているオンナのためである。
もとい、ビールのためである。
いやはやどうも、”もとい”の多い今日この頃。
読者の方々には何かとご迷惑をお掛けしております。

のどはすでに潤した。
あとは舌を歓ばせ、栄養を摂取してスタミナをつけよう。
冷奴の小鉢を隅に除け、おもむろにメニューを開いた。

=つづく=