2011年7月1日金曜日

第87話 水茄子の季節

先日、作曲家・筒美京平サンのことを書いたら
読者の方々から「ボクも好き」、
「わたしもファン」という声が多数寄せられた。
その中に野口五郎の「私鉄沿線」を推す方が何人か。

この曲については奇しくも当ブログの第78話でもふれた。
東京郊外の私鉄沿線を散歩しながら口ずさむくらいだから
好きな1曲であることに間違いはないのだけれど、
実はこの曲、筒美サンの作曲ではない。
珍しくも彼は編曲を担当しているのだ。

季節はずれの晴天というより、
暑気払いが必要なくらいに暑い日が続く毎日。
「梅雨よお前は何処に?」―
空に向かって問い掛けたいくらいのものだ。
もっとも子どもの頃から暑いのは大好き。
フェイヴァリット・シーズンは夏、
フェイヴァリット・マンスは8月につき、いっこうに構わない。

遠く泉州は岸和田特産の水茄子が出回っている。
だんじり祭りで名を馳せる岸和田だが
この地で採れる水茄子は天下の珍味、
生で食べられる貴重な茄子である。
アクは少なく水分多く、これが生食を可能にしている。

岸和田市に隣接する貝塚市の馬場茄子は
まぼろしの水茄子の異名をとり、
その旨さたるや想像を絶するものがあると聞くものの、
機会に恵まれず、いまだ口にしたことはない。
われわれの世代は貝塚の名を耳にすると
女子バレーの日紡貝塚を思い起こさずにはいられない。
東京オリンピックで金メダルを獲得した”東洋の魔女”、
その基盤となった偉大なチームである。

古い民家のおかげで昭和の情緒を残す文京区・根津。
ここに大阪から進出して来たうどん店、「釜竹」がある。
本店は羽曳野にあり、岸和田に近いといえば近い。
根津店の昼は地元の会社員のほか、
谷根千歩きにいそしむオバタリアンが襲来したりもして
かなりの活況を呈している。

この間など、どこからやって来たのか高校生、
いや、中学生かもしれないな、
とにかくそんな感じの男子が5名、
車座になってうどんをすすっているではないか!
わが身を振り返ると、その時代に口に入ったのは
ラーメン・たぬきうどん・ソース焼きそばが関の山。
いやはや、今どきの子どもはいいモン食ってるなァ。
親は小遣いをやり過ぎじゃないの?

みちのくで麺造りに携わっている友人が
上京してきたので「釜竹」に案内した。
昼下がりのビールを飲りながら
本日のおすすめ、水茄子を所望する。
季節感を舌先に運ぶ食べものが少なくなった当節、
貴重ですなァ、うれしいですなァ、旨いですなァ。
いきなり”ですなァ”を三連発だ。

後学のために釜揚げうどん、細・太2種あるざるうどん、
3品すべてを注文して2人で分ける。
いずれものびやかなコシのあるうどんたちだが
3人前はかなりのボリュームでシンドい。
たぬきうどんの大盛りにライスまで付けた高校時代。
帰り来ぬ青春を振り返ってほろ苦し。

「釜竹」
 東京都文京区根津2-14-18
 03-5815-4675