2011年11月4日金曜日

第177話 月の輝く夜に (その2)

映画「月の輝く夜に」では
ピッツァ職人のニコラス・ケイジが
兄嫁になる予定のシェールをオペラに誘う。
しがない職人の唯一の趣味がオペラなのだった。

メトロポリタンン・オペラハウスで観た人生初めてのオペラ、
「ラ・ボエーム」にシェールは感動の涙を流す。
映画「プリティウーマン」でもやはり初めて
「ラ・トラヴィアータ」を観たジュリア・ロバーツが泣いている。
アメリカではオペラに涙するのが、いいオンナの証しらしい。

ちなみにリチャード・ギアがジュリアを連れて行ったのは
サンフランシスコのウォー・メモリアル・オペラハウス。
今からちょうど60年前の1951年、
サンフランシスコ講和会議及び、
条約の調印が行われた場所がここだ。

メトの「ラ・ボエーム」は何回か観ている。
ヒマに任せて当時のダイアリーをチェックしたら
ゲッ! 何と、5回も観ていたぜ。
ほかにチェコのプラハ国立歌劇場でも1回。
プッチーニの作品では「トスカ」が一番好きだが
「蝶々夫人」、「トゥーランドット」と同様に
代表作にはひんぱんに足を運んでいたことが判る。

さて、現在に戻って谷中はすずらん通りの「エゾットリア」。
3連休最後の月曜日に赴いた。
当日も月夜の晩である。

入店すると、アレレ、足元に見覚えのある子犬が1匹。
おっと、3日前に立ち寄った際、
女性客が膝に乗せていたワン公だよ、これは!
なかなかに人なつっこい瞳の持ち主は
紛れもないトイプードルでんがな。

ちょっと待てよ、するってえと、
この子の飼い主は彼女じゃなくってお店だわサ。
訊けば、カノジョのいない店主の恋人なんだと―。
したがって四六時中、一緒なんだと―。
そいつは仲むつまじくて、けっこうなこった。

メニューに目を通しながら、この夜はいきなり赤ワイン。
何となればホンの数分前に谷中銀座の酒屋の店先で
冷たい生ビールをクイ~ッとやってきたばかり。
最近は初見参の店に限り、
訪問前に最寄りのどこかで好みの銘柄を1~2杯、
必ず引っ掛けることにしている。

一日終えて日が暮れて、さあ飲むぞというときに
何よりも楽しみなビールが気に染まないヤツだったら
泣くに泣けまへんもん。

=つづく=