2011年11月25日金曜日

第192話 競輪場のある町 (その1)

11月好日。
晴れ、曇ってはまた晴れる。
風絶えて暖かなり。
先考の墓を掃(はら)い、香華を供(ささ)ぐ。

本日は荷風センセイ風に書き出してみました。

松戸市の都営八柱霊園を訪れるのは5月と11月。
気候穏やかにして、雨の日が少ないからだ。
墓参りは降られるとシンドい。
仏のほうだって雨の訪問者は迷惑だろうし・・・。

三島由紀夫が絶賛した仁侠映画の傑作、
「総長賭博」における雨の墓参シーンは圧巻だった。
鶴田・若富・藤純子、いずれ劣らぬ名優・女優だけれど、
今も散らずに残っているのは一輪の緋牡丹だけか・・・。

常々、霊園へは八柱駅から歩いて行く。
徒歩でおよそ15分。
此度はJRで松戸の一つ先、北松戸で下車した。
ここから墓地へは相当の距離があるにもかかわらずだ。

30年前の一時期、何度も訪れた北松戸。
町のランドマークは競輪場だが
生まれてこのかた車券を買ったことがない。
なぜひんぱんにやって来たのかというと
岡沢家の墓に眠っている仏が
近くの市立病院で最後の日々を送ったから。
したがって競輪場のある西口へは下りたことがない。
いつも東口に出て病院までのゆるやかな坂を上った。

墓参後の晩酌はこの町と決めていたので
ギャンブル場の周りを物色する。
飲み屋が多いのは当然、数軒の下見を終えた。

東口の坂を上り始めてほどなく「麺座 まねき」に心惹かれた。
入店すると、初老の夫婦が2人だけで営んでいる。
10席ほどのカウンターにいくつもの招き猫が並んでいた。
揃って猫好きなのであろうよ。

まねきらーめん醤油味 600円  特製塩味 700円
潮まねき醤油 650円  のりしおそば 750円
かぼすらーめん(季節限定) 650円


ここはオーソドックスに醤油味を注文。
卓上にはギャバンの白と黒の胡椒、原了郭の黒七味、
生酢(きず)、爪楊枝が整然と置かれていた。

運ばれたのはらーめんというより中華そば。
アタリ柔らかなスープにコシしっかりの細打ち麺は
ともにケレンなく、好みのタイプである。
厚い肩ロースのチャーシューと水菜はうれしくないが
細切りシナチク、味玉半個、焼き海苔はありがたい。
ビールを頼んだらシナチクをサービスしてくれたのも好評価。
われ棲む町にあったらば、月イチは訪れること必至であろう。

=つづく=

「麺座 まねき」
 千葉県松戸市北松戸2-7-3
 047-366-5537