2011年11月11日金曜日

第182話 身重を送る送別会 (その1)

食べ歩き仲間のM央チャンが
旦那のあとを追って訪米の運びとなった。
行く先はクルマの街・デトロイト。
MLBの人気球団、タイガースの本拠地でもある。
ただ今、彼女は妊娠8ヶ月・・・だったかナ?
予定日は確か1月某日のハズで紛れもないプレグナントだ。

その夜のほかのメンバーは
今は無きカレーミュージアム名誉館長だったO野チャンと
いつも仕切り役にしてイカズ後家のA子嬢である。
この4人は3~4ヶ月に一ぺん食卓を共にする仲間、
当夜訪れたのは品川区・大井町で
A子が探してきた「燻製キッチン」なる燻製料理専門店。

集合時間よりずいぶん早く現地入りした。
さすれば一足先に単独で晩酌を始めねばならない。
カンカン照りの真夏はもとより、秋風が立とうが、
枯葉が舞おうが、粉雪がちらつこうが、桜が芽吹こうが、
1年365日、夕暮れに冷たいビールを飲らねば、
J.C.の夜はやって来ない。

目指すは時代遅れの酒場街である。
そう、ノスタルジーかきたてる東小路飲食店街だ。
昭和3~40年代に隆盛を誇ったこの一角は
昭和が色濃く残るなんて生やさしいもんじゃない。
敗戦後の闇市の気配すら漂わせている。
さすらいのギャンブラーならぬ、宵闇のセンベラーには
絶対オススメの聖地と言い切ってよい。

最初に向かったのは常に
店から表に客があふれ出ている「肉のまえかわ」。
町の精肉店でありながら本来の商売よりも
立ち飲み居酒屋として機能している変ンな店だ。
金290円也のスーパードライ・レギュラー缶に
金110円也の串カツを1本所望した。

缶から直接飲むビールは旨かあないが
コップなんか頼もうものなら
アイソのアの字もない中国人の姐チャンに
張っ倒されるかもしれない雰囲気につき、ジッとガマン。
まずは芋洗い状態の店内から脱出した。

脱出はしたが店外に身を置くスペースが見当たらない。
仕方ないから路地をはさんで向かい側、
飲食店の空調の室外機に串カツの皿を乗せ、
おもむろに缶ビールをあおった。
何の因果でこんなことしてんだか・・・。

空いた缶と皿を自ら片付け、早々に立ち去ったものの、
みんなと落ち合うにはまだ若干の余裕がある。
そこでもう1軒立ち寄ったのが
かつて町のランドマークだった「大山酒場」の跡地辺りに
新しく出来た名もない立ち飲み屋。
若いアンちゃんが2人で頑張っている。

頑張ってはいるが生ビールとともに頼んだおでんがヒドい。
つみれは鰯の風味よりもなんだか鮮度落ちの肉臭いぞ。
スジはつなぎばかりで魚すり身の味がまったくしないぞ。
つゆに至っては化調サンが全面主張ときたもんだ。
こりゃたまらんわと、即時撤退を決断。
気を取り直し、「燻製キッチン」に向かいましたとサ。

「肉のまえかわ」
 東京都品川区東大井5-2-9
 03-3471-2377