2011年11月23日水曜日

第190話 愛猫プッチ 失踪す!(その2)

いない、いない、ウチの猫がいない!
いったいどこへ消え失せたのか?
これは家出か? はたまた失踪か?

14年も以前、アメリカから帰国して間もない頃。
ある日、一人の部下がデスクにやって来て
「スンマセン、早退させてください」
「どうした?、体調でも悪いのか?」
「いえ、ウチの猫がいなくなっちゃいまして・・・」
「それで?」
「いえ、あの、近所を捜さないと・・・」
「ハア?」
こんな会話が交わされた。

結局は早退を許可したが心の内では
「ったく、最近の若いモンはナニ考えてんだか!」であった。
だども、今のわが身にはヤツの切実な気持ちが
痛いほど判るんですなァ。
そう、生きものを飼うことは、
その生きものを愛することは、こういうことなのだ。

愛猫プッチが忽然と姿を消したのはいかなる理由か?
数時間前の記憶をたどり、推理をめぐらせる。
経験則から、たとえ玄関にすき間があっても
せいぜい顔を出す程度、絶対に外出することはない。

さすれば、ちょくちょくお出ましのベランダだ。
以前にもベランダ沿いに隣家を訪れ、
しばらく滞在したのちに帰って来たことがある。
身を乗り出して隣りをのぞいてみても真っ暗闇。
まさか夜の夜中にピンポンするわけにもいかず、
すべては夜が明けてからとあきらめた。

あきらめてはみたが、寝つきの悪いことったらない。
帰宅の遅い夫を待つ妻の心境を
生まれて初めて身をもって知った。
世の旦那サン、愛妻のためにお帰りはお早めにネ。

浅い眠りに寝返りばかりを打ち、
いつしかしらじらと明け方の5時。
小用にベッドを出ると、開けてビックリ玉手箱。
リビングの板の間に奴さん、
ちゃっかりうずくまっているではないのっ。
「コネ野郎、さんざ心配させやがって!」―
取りあえず叱咤しただけで体罰は免除し、
朝まで(もう朝なのだけれど)同衾を許した。

数時間後に目覚め、さて、刑罰を与えねばならない。
すると敵もしたたか、空気を察して盛んに逃げ回る。

物陰に隠れて視線を合わせず

罪の意識があるのだろうか? あるハズないやナ。
引きずり出して実刑はデコピン一発だ。

観念したものか真名板の鯉状態

額(ひたい)にキツい一発をお見舞いしたら
止めるヒマもあらばこそ、一目散に逃げ出した。
まっ、いいか、放免としてやろう。

10時間の失踪事件はこれにて一件落着。
と思ったものの、厄介なのは3缶開けたツナ缶である。
それから3日間はバカ猫とともに
せっせこ、せっせこ、ツナを食いまくりましたとサ。
しっかし、ツナ缶っつうのは旨いもんじゃねぇナ。