2011年11月10日木曜日

第181話 新派のあとのオイスター

米映画「リバティ・バランスを射った男」を
三越劇場が上映したのは49年前。
今は芝居一辺倒だが往時は映画も掛けていたのだ。
思い出せば松本清張原作の「砂の器」もここで観た。
製作の2年後の1976年だったから
封切館ではなかったのだろう。

その三越劇場に出掛けたのは数週間前の日曜日。
演し物は新派アトリエ公演の「女の一生」である。
主役の布引けいは名女優・杉村春子の当たり役で
その役を常日頃からひいきにしている、
中堅女優の石原舞子が演ずるとあって
われら仲間が大挙して乗り込んだわけだ。
彼女にぞっこんのファンクラブ会長・K石クンなんぞ、
終始ソワソワして落ち着かないことはなはだしい。

一抹の不安を抱えながらの観劇はまったくの杞憂。
大向こうをもうならせる演技に老婆心などどこへやら
大いに芝居を堪能させてもらった。
よかったぜ、エラかったよ、舞子!
何たって舞子の”舞”は、舞台の”舞”だかんネ。

さて、芝居がハネたあと、一行は地下鉄で京橋へ移動。
予約を入れておいたのは
わが心の牡蠣料理店、「レバンテ」だ。
数年前に有楽町駅前から東京フォーラムに移転してきたが
松本清張の出世作、「点と線」に実名で登場する名店である。
稀代の洒落者、故・山口瞳サンは
九段下「寿司政」の新子を食べずば、私の夏は終わらない、
と名言を残したが、その伝を継承させてもらうと、
「レバンテ」の牡蠣を食べずして、J.C.の秋は始まらない。

当夜はいつもの同期生たちのほかに
「柔道一直線」でおなじみの桜木健一ご夫妻が
参加してくださり、おかげで座は大盛り上がり。
ドラマを観たのは確か高校三年生だったなァ。

聞けば、翌日は早朝から映画ロケで隠岐に飛ぶそうな。
しかも役柄が牡蠣の養殖会社の社長だと―。
とんだところでの牡蠣つながりに一同、大笑いだ。

三重県・的矢産しか使わぬ「レバンテ」では
生がきで始め、かきフライで継ぎ、かきピラフで締める。
これが当店必食の御三家と心に決めている。
注意点はかきフライで2種類あるうち、
生がき用の高価なほうでなく小粒で廉価なほうがオススメ。
まっ、好きずきではありますけどネ。
あとはローストビーフと串カツと、なんかサラダも頼んだな。

サッポロの生ビールをガンガン飲り、
白ワインはシャトー・メルシャン、
赤ワインはキャンティ・クラシコ。
このラインはずっと変わることがない。

よき友、よき酒、よき料理、
まっこと「男の一生」をエンジョイしておりやす。
殊にJ.C.の場合は、柔道ならぬ「酒道一直線」にござんす。

「レバンテ」
 東京都千代田区丸の内3-5-1
 03-3201-2661