2012年3月14日水曜日

第272話 酩酊度を検証に再び (その3)

「庚申酒場」をあとにして
とげぬき地蔵こと高岩寺の前を横切りJR巣鴨駅前に出た。
北口広場界隈には気の利いた居酒屋が何軒かあるが
「富久晴」・「江戸一」・「庚申酒場」と酒場ばかりを渡り歩いて
少々目先を変えたい心境につき、
「25時」なるダイニングバーみたいな店に入った。
以前は店名の通り、25時(午前1時)まで営業していた模様。
深夜の客が減ったためか、現在は23時に閉店する。
第一印象は巣鴨という土地に似つかわしくない雰囲気だ。

店名のアタマに無国籍料理を冠しており、
なるほどメニューを見れば一目瞭然なれど、
まあ、和洋折衷といった程度で今の世の中、
居酒屋チェーンでもピザやパエリャを出すからネ。

ドリンクメニューは輸入ビールの取り揃えが豊富。
1本目はフランスのクローネンブールを所望する。
1664年にアルザスのストラスブールに設立された、
老舗メーカーの手になるもので実に350年の歴史を誇る。
米国の東海岸では同じ1664年に
オランダの植民地だったニューアムステルダムが
英国に奪取され、ニューヨークに名前を改めている。

飲みものだけでも問題なさそうだが、それじゃ可愛いくないから
焼き天豆(そらまめ)を注文するとビールの合いの手になかなか。
ゆでれば妙な匂いを発する天豆も焼かれた場合はおとなしい。
でも一番は下町の古い豆屋で売っている炒り天豆。
アレは塩豆や落花生より好きだな。

ビールのお替わりはオランダのグロールシュ。
こちらはクローネンブールの上をゆく1615年の設立で
オランダ最古のビール会社。
オランダビールというと世界的にハイネケンが有名だが
歴史的にはグロールシュが250年ほど先輩に当たる。
飲み口を比べるとハイネケンがサッポロ黒ラベルなら
グロールシュはエビスといった感じ。
タイプが異なるからこそ、両雄が並び立つのかもしれない。

メニューを眺めていて白ソーセージを発見した。
ドイツ語でヴァイスヴルストといい、
バイエルン地方ののミュンヘンが本場。
15年前にミュンヘンの市庁舎そばの確か、
「Dolniz」というレストランで食べたが
本場では蜂蜜入りのハニーマスタードを添えてくるのが常。
ヘッ! と思ったものの、試してみたら相性抜群だった。
郷土料理にはそれなりの裏づけがあるのだ。
北欧ではミートボールに野いちごのジャムを添えるものネ。
残念ながら「25時」では
ありふれたディジョンの粒マスタードで独仏同舟の景色。
悲しい歴史を持つ両国ながら
メルケルとサルコジがけっこう仲むつまじい今日この頃である。

自分の酔っ払い度をチェックしに出掛け、結局4軒もハシゴした。
だが、どんなに酒を飲もうとも
ビールに主導権を握らせておくぶんには心配無用。
まだ13日火曜日の午後3時だが綴ってるうちに飲みたくなった。
冷蔵庫のビール室にはサッポロ黒ラベル、アサヒスーパードライ、
そして最近水代わりに飲み始めた低アルコールにして
糖質ゼロのキリン濃い味が揃ってピックアップを待っている。
今夜は麻雀につき、低アルコールでお茶を濁すとしますかの。
糖質ゼロでフリ込みゼロの楽勝ムードでいきたいものですな。

=おしまい==

「25時」
 東京都豊島区巣鴨3-28-8
 03-3940-4490