2012年3月19日月曜日

第275話 再び部下と飲みました (その2)

都営新宿線・住吉駅前の「山城屋酒場」にいる。
南砂町にある同名店は縁戚筋だ。
何年か前に建替えられた住吉店は砂町店に比して
レトロ感では劣るものの、スッキリ感では優っている。

大島の「ゑびす」でビールを飲んできたので
生は1杯だけにして燗酒に切り替えた。
ガラス瓶入りではなかったが、ここにも菊正宗があった。
僥倖と言わねばならない。
乙女たちは順調に生中のお替わりをしている。

元部下でビールが好きなA子の呑ん兵衛ぶりは前回実証済み。
コニャック娘のR美のほうは未確認ながら
A子によれば熱燗が大好きなのだと―。
ふ~ん、珍しいネ。
大のオトコをもいきなり沈没させる破壊力を秘める日本酒を
よりによって24歳のギャルがこよなく愛するとは―。
過去に一つや二つの酒による大失敗があるんじゃないか・・・
そう勘ぐりたくなるのもむべなるかな。

選んだ初っ端のつまみは名物・とんから。
豚ロース肉を油で揚げた、いわゆる豚の唐揚げで
パン粉をつけない小ぶりのとんかつといった風体である。
これが350円とあってはほとんどの客が放っておかない。
豚へ豚へとお客もなびく・・・当然の帰結であろう。

一切れ口元に運んだ乙女たちの眼がパッと輝いて異口同音に
「おいっし~い!」
そうであろう、そうであろうとも。
しょっちゅう居酒屋チェーンに行ってる連中が
下町酒場のレベルの高さを実感した瞬間であった。

おあとの注文は二人に任せた。
すると、しらすおろしに月見とろろを選ぶではないか。
こちらはウェルカムだが、ずいぶんとジジむさい2品だねェ。
糖尿病でも患ってんじゃないのかい?

割り箸でとろろをコネコネして
「これは山芋じゃなくて大和芋だわ」なんてホザいてる。
ほう、判ってるじゃないの。
おっと、二人は料理教室の講師なのでした。
もっともコニャックのほうはパン専門らしいがネ。

熱燗に切替えた牝猫ともどもしこたま飲み、
隣り町の菊川にタクシーで移動する。
お次は「みたかや酒場」なる”婦唱夫随”のユニーク店。
女将サンは町の天然記念物に指定されてもおかしくない人物で
気はいいけれど、けっこうおっかない。

ここでは三者揃ってビールに集中した。
店に2本だけ残っていたサッポロ赤星は瞬く間にカラになり、
続いてのキリンラガーも4~5本は空いただろうか。
あれ、あれ、ふと気がつけば、
酔いの回った牝猫たちが女将にタメ口をたたいているヨ。
いやはや、ナントカ、蛇に怖じずとはこのことである。

しまいにゃ締めに頼んだソース焼きそばが余ったんで持ち帰るなどと、
こちらがハラハラ、ヒヤヒヤしちゃうぜ、まったく!
ところが普段は認可されないはずのテイクアウトが許された。
一体全体、どうなっちまったんだか。
2匹の猫に虎タジタジの景色がそこにありました。

「山城屋酒場」
 東京都江東区住吉2-7-14
 03-3631-1216

「みたかや酒場」
 東京都江東区森下4-20-3
 03-3632-4744