2012年3月29日木曜日

第283話 貝と鮪と一夜干し (その1)

リピーターでもないJ.C.が
リピートする数少ない飲み屋の筆頭は
当ブログにもたびたび登場する大塚の「江戸一」。
それなりの理由はあるがほとんど理屈ナシ、
無条件で好きだ。
すぐそばの焼きとん「富久晴」とペアになっており、
大塚の町に来て片方だけというケースはまれだ。

ほかに行きつけというほどではなくとも
ときどきリピートしているのは
上野「味の笛」、神田「三州屋」、有楽町「八起」、
渋谷「富士屋本店」、池袋「ふくろ」、十条「天将」といった、
肩のこらないカジュアルな店ばかり。

出没率の高い浅草となると、
「神谷バー」と「正直ビヤホール」を挙げねばならない。
前者とペアを組むのが「志ぶや」で
後者の場合は「ニュー王将」ということになる。
これが夏場になると1軒目は
是が否でも川向こうの「23BANCHI CAFE」だ。

春まだ遠い、とある夜は
編集者のS倉クンと「志ぶや」の小上がりに差し向かい。
2人だからカウンターがよかったが
あいにく二連結の空席がなかった。
たまに上がって胡坐(あぐら)をかくのも悪くはない。
浅草に来て生モノがほしいときは「志ぶや」を訪れる。
ここはもともと鮮魚店、サカナに対する目利きが違うのだ。

浅草はアサヒビールのお膝元である。
だのに「志ぶや」が置くのはキリンラガーのみ。
プレモルやエビスじゃないのが救いながら
やはりドライか黒ラベが飲みたい。
だからこそ「神谷」ではアサヒ、
「正直」ではサッポロの生ビールの存在が
大きくクローズアップされるのだ。

貝好きのS倉クンのため、つまみはいきなり貝の三連発。
赤貝刺し、焼きはまぐり、とり貝ぬたをお願いした。

ヒモ付きの赤貝刺し

偶然だがサッポロラーメンみたいに
醤油・塩・味噌と、異なる味わいになった。
それにしてもどうして貝ってこんなに旨いんだろう。

菊正宗の上燗に切り替えながらあらためて思う。
ここでは何を食べてもハズレはないなァ。
本わさびにとことんこだわる「志ぶや」だから
貝のみならず、大海を泳ぐサカナを味わっておきたい。
さすれば、鯖か鮪か寒鰤か・・・。
思案の末に鮪のブツを所望した。

ブツはかくあるべし

刺身とはひと味違い、ブツにはブツのよさがある。

=つづく=