2012年4月9日月曜日

第290話 東京で飲むなら西より東 (その2)

2週連続で江東区・大島の酒場「ゑびす」を訪ねた。
前回は独りで生ビールを2杯飲んだ。
突き出しの炒り天豆(そらまめ)が独創的。
柿ピーなんかよりずっと気が利いており、
皮付き南京豆や塩豆に匹敵するほど、
小粋なアテに成り得ている。

つまみには〆加減強めのアジ酢を。
本来、こういうものは日本酒向きだが
あとにはしご酒が控えていたので自重した。
調子に乗って第一コーナーからとばすのはよくない。

2回目は宮城から上京してきたのみともR子を同伴。
東京暮らしの経験を持つ彼女も
さすがにこの界隈は未踏とのこと。
知らない町の商店街を歩きたいというから
サンロード中の橋なるやたらめったら
八百屋系店舗の目立つ通りをひと流し。
昭和の匂いの立ち込める場所をブラつくのは楽しい。
そうしておいておもむろに第一目的地の「ゑびす」へ。

ビールはアサヒの大瓶、日本酒は菊正の燗。
ここまではいつものパターンだ。
当夜はそれに加えて合同酒精のデンキブランを1杯。
浅草「神谷バー」の名物につき、たびたび飲むうちに
酒におけるレパートリーの仲間入りを果たされてしまった。

つまみは菜花の辛子和えとケチャップの掛かったオムレツ。
菜花はともかく、オムレツで外すことは考えにくい。
と思ってはみたけれど、
北仏はノルマンディーの名勝地、
モンサンミッシェルのオムレツは相当に不味いらしいネ。
いや、食べたことはないんだが・・・。

ここで大衆酒場や大衆食堂でしか見られない料理を1品。
豚肉と玉ねぎを炒めて作る炒り豚というヤツで
通常はナポリタンみたいなケチャップ味が多い。
「ゑびす」では化調を感ずるものの、シンプルな塩味だった。
ここまではそれぞれにOK。
ところがこのあとに追加した穴子フライが失敗の巻だ。
穴子自身と揚げ油の双方にに難点があり、
4品目にして初めてハズレの憂き目を見る。

店内の空気おだやかにして、時間はゆっくり流れている。
男の単身客がほとんどを占める中、
若い女性がひとしきり飲んだあと、おにぎりを食べ始めた。
浅草や深川ではあまり見かけぬ光景だ。
近所に棲む常連だろうが、どことなくローカル色を感じる。

大衆酒場ではダラダラと長居をせず、
早め早めにに切上げるのがスマート。
つい、ダラダラ飲んでしまうJ.C.が
はしごを余儀なくされる理由がコレである。
はて、どこに流れるとしようか・・・。

=つづく=

「ゑびす」
 東京都江東区大島4-8-8
 03-3681-6823