2012年4月19日木曜日

第298話 煮穴子に初挑戦

とまあ、一風変わった朝食を作って食べたが
実は食材を調達したときに
もう一つ買い求めたものがあった。
開いた穴子である。
これはその日のうちに煮て酒のつまみとした。
紹介する順序があと先になったけれど、
「昼下がりの情事」から「ティファニーで朝食を」へと、
ヘプバーンつながりを優先したもんですから・・・。

今までに数十種類の魚介を購入してきた。
にもかかわらず穴子は初めて。
餅は餅屋、穴子は鮨屋か天ぷら屋。
素人が生半可なシゴトをしても
プロには到底かなわぬものとあきらめていたからなァ。

それが先日、煮はまぐりを自分で作ってみて
意外にも上手くできたものだから
二匹目のどぜうを狙う下心がなかったと言えば嘘になる。
しかもわが家の書棚には
浅草「弁天山美家古寿司」のレシピを記した本という、
つええ味方があったのだ!

著者は先代(四代目)親方の故・内田榮一氏。
江戸前鮨におけるわが心の師である。
四代目のにぎる鮨に出会っていなければ、
江戸前鮨に対する概念はまったく違ったろうし、
わが半生も色あせて味気ないものとなったに相違ない。
まっこと”仰げば尊し、わが師の恩”である。

北千住で買った穴子はかようにさばかれていた。

めそっ子サイズで理想的

師の教えに従い、酒・白砂糖・醤油で煮てゆく。
鍋が小さいので真ん中に包丁を入れた。

きれいに煮あがった穴子

爽やかに煮あげるので、これを爽煮という。
「美家古」の煮穴子は実に個性的な歯ごたえと舌ざわり。
他店とは一線も二線も画する逸品である。
舌の上でとろけるヤワなヤツが珍重される昨今ながら
あんなのは愚の骨頂で、赤ん坊の離乳食じゃあるまいし、
成人映画を観られる成人には永久歯というものがあろう。

燗酒とともに穴子爽煮を味わう。

上半身は煮つめ、下半身はわさび醤油で

煮つめは以前作った煮はまぐりの煮汁と
今回の穴子のとを合わせたものだ。
けっして悪くはないものの、
「美家古」のそれには遠く及ばない。
それもそのはず、煮つめる時間が雲泥の差。
つまりが甘く、コク味が足りない。

三重産の穴子は3尾で350円。
近頃、高騰しているうなぎに比べ、断然安い。
今は昔、貧乏人は麦を食え!とのたまわった首相ありき。
貧乏人でもまだまだ食える穴子クン。
可愛いやっちゃ!