2012年4月25日水曜日

第302話 また観てしまった渡り鳥 (その1)

アップ・スケジュールをしっかり組み込んでも
なぜか時間通りに起動してくれない当ブログ。
原因不明でただ今、調査中なのだが
読者にはご迷惑をおかけしてすみません。
昨日もそうだし、一昨日もそうだった。
殊に一昨日の朝は旅先におり、
あちこち手配してアップできたのが夕方近く。
いかんともし難かったのであります。

それはそれとして
そろそろ上野・不忍池のゆりかもめが
夏羽に着替え、北へ帰る季節。
桜散り、鳥帰り、そして誰もいなくなったあと、
梅雨が明けるあたりから蓮の花が開き始める。
蓮は夏の季語である。

過日、神保町シアターで
『春情鳩の街より』渡り鳥いつ帰る」をまた観てしまった。
「女優・高峰秀子 アンコール」と銘打った特集の一環だ。
永井荷風の原作を久保田万太郎が構成し、
久松静児がメガフォンをとった1955年の映画である。
いまだDVD化されてないため、
都内の映画館にこの作品がかかると、
時間の許す限り出向いてゆく。

今も往時を偲ばせる墨田区・鳩の街から映画は始まる。
セットではないロケ、これが何ともありがたい。
花売り娘ならぬ花売り爺さんに始まり、その爺さんで終わるのだ。
扮するのは ♪ ドゥビドゥバー やめてけれ ♪ で有名な左卜全。

鳩の街は戦災から焼け残り、
「濹東綺譚」の舞台となった玉の井の業者が移転して来て
アッという間に作り上げた新興カフェー街。
比較的素人っぽい女性が多いと喧伝され、
それから客足に拍車がかかったという。
映画が生まれる前夜の昭和28、29年には
100軒以上が営業しており、
春をひさぐ女性は300人を超えていた。

映画では夜のシーンもさることながら
こと済んだあとの翌朝が丹念に描かれている。
東京最大の紅燈街・吉原の朝があわただしかったのに比べ、
鳩の街はおおらかで、客が昼近くまでダラダラしていても
べつに文句は言われなかったようだ。
けだるさの中にものんびりとした空気が流れ、
観客までほのぼのとした気分になってくる。

ロケシーンがとても多く、
当時の東京の映像がふんだんに映し撮られ、
映画ファンならずとも昭和にノスタルジーを感ずる向きには
まさに垂涎、貴重な本作は必見でありましょう。

=つづく=