2012年4月20日金曜日

第299話 口八丁に手八丁 (その1) にせどろ千夜一夜 Vol.6

千円札が2枚ほどあればべろべろどころか
泥酔できる酒場を訪ねて回る、にせどろシリーズ。
久しぶりにいきます。

此度の舞台は江東区・森下。
いわゆる深川の北限に位置する町である。
ここはちょいとした墨東のグルメスポットで
J.C.気に入りの店がズラリと揃っている。
どぜう「伊せ喜」、そば「京金」、天ぷら「満る善」、
洋食「深川煉瓦亭」、焼きとん「三徳」、
深川めし「みや古」、ケトバシ「みの家本店」、
ピッツァ「ベッラ・ナポリ」と、枚挙にいとまがない。

今回訪れたのは「はやふね食堂」。
この店には大女将という名のスーパースターがいる。
齢九十を超えると聞いた記憶があるが、ホントかね?
ちょいと老け気味の六十代でもじゅうぶん通用しまっせ。

とにかくいつもフル稼働。
注文取りからお運びまですべてをこなし、
客との世間話に余念なく、
TVの報道バラエティを観ては
その感想、並びに解説までしてのける。
「まァ、ヒドい事件だこと!」
「ああ、子どもが可愛そうに!」
口をつぐむいとまとてない。
佐賀のがばいばあちゃんも真っ青の活躍ぶりなのだ。

ビールは大・小ともにキリンラガーのみ。
大瓶が530円、小瓶は360円。
清酒は菊正宗の1合瓶で390円。
うれしい安さだが、これでも最近10円づつ値上げした。
ザッと品書きを紹介してみよう。

お新香・・30円  梅干し・味噌こんにゃく・・各90円  
冷やしトマト・きんぴら・・各100円  野菜入りおから・・130円  
ほうれん草胡麻和え・・150円  肉じゃが・里芋煮・・各180円  
冷奴・湯どうふ・・各190円  さば塩焼きor 味噌煮・・各280円 
甘塩さけ・さんま塩焼き・アジフライ・・各300円

こんな塩梅である。
たらこ(生・焼き)が250~300円とあるのは
サイズがまちまちだからだろう。
最初に見たときは生が250円で焼きが300円なのかと思った。

最終チェックに現れたのは17時前後。
暖簾をくぐって引き戸をうしろ手でしめようとすると、
建てつけが悪いせいか戸がしまらない。
力まかせにグイッとやったら
「何だ!何だよォ!」―背後から怒声が飛んで来た。

=つづく=