2012年4月10日火曜日

第291話 東京で飲むなら西より東 (その3)

都の真東、江東区・大島に来ている。
酒場「ゑびす」にて移動先を算段している。
前週は大島・住吉・菊川と、
都営新宿線沿線を三段活用して飲み歩いた。
同じルートを踏襲する手もあるが
気分を変えて進路を北に取り、
亀戸・錦糸町に流れるのも悪くない。
あるいは南下して木場・門仲あたりに行き着くか・・・。

そんなことをボンヤリと思いながら
底に少しばかり残ったデンキブランを飲み干したとき、
頭の中の裸電球がピカッと光彩を放った。
ついさっき「ゑびす」の敷居をまたぐ前、
チラリ視線を投げかけた隣りの店のことだ。

「亀戸餃子大島店」は
本店を亀戸に構える「亀戸餃子」の姉妹店。
いや、支店なのかな?
そのへんのことは詳しく知らない。
本店には餃子しかないが
「大島店」には麺類や炒飯や一品料理がある。
「錦糸町店」もそうだった。
未訪の「両国店」もおそらくそうであろう。

相方に打診すると餃子にOKのサイン。
移動の手間も省けるし、
これを渡りに舟と言わずして何と言う。
でもって、お勘定の1分後、
餃子屋のカウンターに連座する二人の姿を見ることができた。

餃子一つで名を成したくらいだから
「亀戸餃子」の餃子はそれなりの美味しさをたたえている。
飲みものをいったんアサヒの大瓶に戻し、
しばらくして常温の老酒に切替えた。
「大島店」といえば炒飯の評価が高い。
原則、夜にごはんモノは食べない(鮨を除く)けれど、
”男の昼めし”にまつわる連載を抱えていることだし、
旨いめしは機会あるごとに試しておきたい。

再度の打診にまたもやOKサインが出た。
数分後に現れた炒飯はなるほどの出来映えである。
ふんわりと軽いタッチで仕上げられ、シツッコさなど皆無。
炒飯の旨い店はありそうでないのが現状だ。

隣り同士の「ゑびす」と「亀戸餃子」を満喫したのに
のみともの夕べはまだお開きにならない。
タクシーに手を上げて住吉の「山城屋酒場」に向かう。
閉店まで30分しかないから
黒ホッピーの外(ホッピー本体)1に、中(甲類焼酎)2を。
これでキッチリ1本がカラになる。
お腹パンパンなれど何か1品ということで
”本日の煮物”を所望すると、おでんであった。
まっ、おでんも煮物の一種、いいでしょう、いいでしょう。

名うての酒場が目白押しの東京下町・東部戦線。
一度バトルフィールドに足を踏み入れたが最後、
戦況は泥沼化して安易に抜け出せなくなる。
ベトナムの原野に敗北した大国アメリカの図さながらだが
どうしてどうして、
こんなに楽しい戦線はそうそうあるものではございません。

=おしまい=

「亀戸餃子大島店」
 東京都江東区大島4-8-9
 03-5628-0871

「山城屋酒場」
 東京都江東区住吉2-7-14
 03-3631-1216