2014年10月2日木曜日

第938話 東大前の食レベル (その2) 

東大安田講堂地下の広大な中央食堂に降りた。
なかなかのスペクタクルなシーンが拡がっている。
味はさて置き、見掛けだけは日本一の学食ではなかろうか? 

ここへ来ると必ず思い出すのが
マンハッタンは東18丁目9番地のアメリカン・バー&レストラン。
その名も「AMERICA」だ。

あの空間に身を置いてグラスを重ねるのが好きだった。
一番奥はせり上がったステージのごとくに設らえられたバー。
このカウンターこそマイ・ホームグラウンドであった。
ここでわが毒牙にかかった乙女は数知れず。
なあ~んてネ。 

 ♪  なんてね  淋しい ♪  

おっと「DESIRE」は昨日やった。

東大中央食堂に戻ろう。
遠来の友を案内したのはいいが
ちょうど昼めしどきにつき、順番待ちは長蛇の列だ。
見ただけでウンザリしてしまい、食欲が失せる。 

食堂に未練を残してうらめしそうな相方をなだめすかし、
通ったばかりの正門を逆に出た。
はて、どこへ行ったらよかんべサ? 
第一感は本郷菊坂下の「海燕」である。
たまに立ち寄るロシア料理店ながら、いささか距離がある。

でもねェ、近場の東大前にはコレといった店がないのよねェ。
東大生に支持されているという「もりかわ食堂」はイマイチだし、
フルーツパーラー「万定」、
あるいは喫茶店「ルオー」のカレーライスじゃなァ・・・。
第一、両方ともちっとも旨くないんだ。

かように東大前の食レベルは低い。
行きたいと思う店が皆目見つからないもの。
時間的制約があるから、そうのんびりとしてもいられない。

苦肉の策で選んだのは日本そばの「まるそ」。
実はこの店、数年前に一度訪れており、
そのときの評価はけして高いものではなかった。

東大正門前の本郷通り沿いには繁盛している店がほとんどない。
そんな環境下で生き延びているのだから
それなりの進化を遂げているかもしれない。
淡い期待を抱いて喫茶店風の店内に入った。

昼のピーク時だからか、あるいは評判がよいからか、
にわかに判断しかねるが、ほぼ満席の盛況ぶりである。
ほほう、なかなかじゃないのと一安心。
いや、ちょいと待てヨ、ここで胸のうちに暗雲が拡がり始めた。

=つづく=