2015年7月13日月曜日

第1140話 あじ酢よければ えび丼またよし (その1)

何か月ぶりかで築地の魚河岸に出向いた。
目的は買い出しではなく昼めしだから場内である。
あちこちに繰り返し書いてきたから
すでに読者はご存じだろうがJ.C.は築地で鮨を食べない。

上から目線で申し訳ないけれど、
江戸前鮨に通ずると、魚河岸で鮨を食うのがバカらしくなる。
サカナの鮮度の良さは認めるものの、
日本人が生み出した鮨という名の食文化は
新鮮な魚介を酢めしにただ乗っければ、
それで済むものでは断じてない。

ここ十数年、黙っていても客が押し寄せるから
築地場内の鮨屋(ずいぶん増えたなァ)は揃いも揃って
本来、施すべき昔ながらのシゴトをしなくなった。
二大人気店、「大和寿司」も「寿司大」も
小肌・きす・さより・春子など、
手のかかる光りモノを出したがらなくなった。
はまぐりやしゃこなど煮モノもまたしかり。
まっ、オンナ子どもや中国人に
”真っ当なシゴトを味わえ”というほうがムリなハナシだがネ。

では場内で何を食すべきか?
オススメは和食堂と洋食屋だ。
J.C.がちょくちょくおジャマするのは
和食の「かとう」、洋食の「小田保」。
この2軒でビールのコップ片手にいただく昼めしは
まっことたまりませんな。

その日は正午ちょい前に「小田保」へ。
冬場なら十中八九、
かきバタ焼きとかきフライのハーフ&ハーフだが
シーズンオフにないものねだりしても始まらない。

4月~9月の半年間、
もっぱらお世話になるのは穴子フライとえび丼だ。
どちらもありそうで、なかなかないメニュー。
穴子天ぷらがあるんだから、穴子フライがあってもいいだろうし、
かつ丼があるなら、えび丼があって不思議ではない。

オニオンスライスでビールを飲みながら壁の品書きを吟味する。
その前にお店へリクエスト。
こういう活気あふれる場所では中瓶ではなく大瓶を用意してほしい。
なるべくアルコールをセーブしたいランチタイムに
大瓶なら1本で済むところを中瓶だとお替わりしてしまう。
フライとカツが大手を振っている
左側にチャーシューエッグの文字が見えるが
これはもともと近所のとんかつ屋「八千代」のオリジナル。
どう、ひいき目に見ても
他人のふんどしで相撲を取ってるようにしか見えないゾ、こりゃ。

=つづく=