2015年7月21日火曜日

第1146話 なかにし礼を聴く (その1)

先頃亡くなった作詞家・横井弘が手がけた作品を聴くため、
三橋美智也のアルバムを探して押入れから引っ張り出した段ボール。
幸いにも三橋のカセットテープは一つ目の箱にあった。

いや、ラッキー、ラッキー。
広くもない、わがヤサには膨大な・・・はちとオーバーか?
とにかく相当数のカセットテープ、CD、DVD、
挙句はLD(レーザーディスク)まで瞑っているのだ。

殊に悩みはかなりの枚数のLD。
すべてオペラだが、自宅にLDプレイヤーがなく、
まったくもって無用の長物と化している。
その重くてデカい図体は
ラタンの箪笥の引き出しをしならせているくらいだ。

さて、段ボールの中を捜索中、
たまたま出てきた1本のテープに心が揺れ動いた。
作詞家(ときには作曲家)・なかにし礼の作品ばかりが
24曲も収録された古いテープであった。
往時、おそらく彼の全集が発売されたのだろう、
それをダビングしたものだ。

丁寧な手書きで1曲ずつ曲名が記されている。
筆跡の主はかれこれ四半世紀前に
TBSラジオのミッションを通じて知り合った旧友。
J.C.が要請したのか、友人が自発的に送ってくれたのか、
真相ははるか忘却の彼方、皆目見当がつかない。

今、ソレを聴きながら、コレを書いている。
テープの1曲目。

 ♪  涙と雨にぬれて 泣いて別れた二人
  肩をふるわせ君は 雨の夜道に消えた
  二人は雨の中で あついくちづけかわし
  ぬれた体をかたく 抱きしめあっていたね

  訳も言わずに君は さよならと言った
  訳も知らずにぼくは うしろ姿を見てた
  恋のよろこび消えて 悲しみだけが残る
  男泣きしてぼくは 涙と雨にぬれた  ♪

シャンソンの訳詞ばかりを書いていた、
なかにし礼のデビュー作、「涙と雨にぬれて」。
驚いたことに、この作品でなかにしは自ら作曲も手がけている。

忘れもしない曲を初めて聴いたのはリアルタイムの1966年。
玉置宏がMCを務めた伝説の歌番組、「ロッテ歌のアルバム」だ。
「1週間のごぶさたでした!」―
フレーズを覚えている読者もおられるだろう。

=つづく=