2015年7月14日火曜日

第1141話 あじ酢よければ えび丼またよし (その2)

築地場内随一の洋食屋、
「小田保」がいつの頃からか提供するようになった、
チャーシューエッグはそもそも近所のとんかつ店、
「八千代」のスペシャリテだ。
とんかつ屋といっても特大サイズの海老フライをウリとしており、
チャーシューエッグは人気商品の第二位にまで育った。

他店のパクリはいただけないが
その点を差し引いても優良店の地位は揺るがない。
ちょうど10年前の同じ7月に上梓した、
「J.C.オカザワの下町を食べる」、
「小田保」の部分を全文引用してみよう。

◇6年越しの舌びらめ

中華以外は和食も洋食もこなす市場の食堂というイメージだが
洋モノに秀でたメニュー多く、カテゴリーとしては洋食に収めておく。
6年も前の正月早々、初回のしゃこわさ(500円)の質に驚いた。
しっとりなめらかなヤツが本わさびとともに現れた。

舌びらめのバタ焼き(950円)は
食べるところがすくなくて不満が残ったが
蟹コロッケ(1100円)が上デキ。
コロモが立って噛めばサックリ、お味もよろしい。
化調をかけられちゃった新香とわかめの味噌汁がちと残念。
硬めに炊かれたごはんは好みであった。

以来、ちょくちょくおジャマしている。

場内で洋食を食べたくなると、大体ここか「たけだ」。
その後、しゃこわさには滅多にお目にかかれない。
代わりにあじ酢のお世話になっている。
しらすおろし・明太子おろし・焼き海苔・納豆など、
副菜がみなおいしく、必然的にドンブリめし、
小さな茶碗ではまだるっこしい。
 
冬場に必ず注文するのはたら豆腐、これがなんと350円だ。
めかじきのバタ焼きも捨てがたいスグレモノ。
逆に肉モノが少々弱く、豚肉の生姜焼きなどパサついた。

つい先日、オバちゃんのオススメに従って、
あまりいい思い出のない舌びらめに再挑戦。
ホオーッ、今度はかなりいいサイズ、しかもずいぶん肉厚だ。
味の素をかけないでとお願いしたお新香と一緒に至福のブランチ、
6年前の仇をキッチリ
討たせていただきやした。

とまあ、こんな塩梅である。
しゃこわさの”かくも長き不在”は何もこの店に限ったことではなく、
東京湾から江戸前しゃこが消えて10年以上にもなる。
ときおり復活の兆しだけは垣間見えるのだが
本格的な回復にはほど遠い。
嘆くべし。
 
=つづく=