2015年9月11日金曜日

第1184話 日暮れの里でたぐるそば(その4)

日暮里は御殿坂の日本そば店、
「川むら」の訪問から2週間ほど経った頃。
日暮れの里に再びJ.C.オカザワの姿を見ることができた。
ただし、同じ日暮里でも此度は西日暮里である。

おジャマしたのは「そば彩園 つるや」。
野暮ったい屋号が気になるものの、店構えはさほど悪くはなく、
以前から見知っていたことも手伝って、今回の初訪問と相成った。

先客は単身のオジさんが二人。
かたや晩飯、こなた晩酌の構図であった。
そこそこのキャパがある店につき、
個別のオジさん二人だけではどうしても寂しさがつきまとう。
まっ、それもよし。
何たって当方もオジさんだからネ。

さっそくサッポロの生ビールをお願いし、プッファー!の巻である。
突き出しには煮つけた大根が一切れ。
おでん屋でも大根はあえて頼まないから
別段、うれしくもなんともないけれど、
箸をつけてみると、意に反してなかなかのお味、
よい合いの手になってはくれた。

オーダーしたつまみは
そば味噌きゅうりと鶏もも肉のハーブバター焼きだったが
どちらもイマイチ、いやイマニの出来だった。
何となくおざなりで、食べ手にうったえてくるものがまるでない。
料理を得意としない主婦が作った家庭料理のレベルなのだ。

これでは先行き期待できないし、長居は無用と判断した。
日本酒に移行することもなく、
そば屋に来たのだからと、一応せいろだけはお願いしてみる。
まあ、一縷(いちる)の望みといったところだろうか。

案の定、肝心のそばもいただけなかった。
中太でやや平たいそれは予想通りに不出来。
仕方なく、たぐり終えてはみたが、これでは浮かぶ瀬とてない。
あらためて想い起こせば、
この店を見とめたのはかれこれ5年以上も前のこと。
そのとき、すんなり入店しなかったのは
それなりの理由があったためかもしれない。

さあ、これからどうしよう。
どこぞで飲み直すか、このまま帰宅の途につくか、
ぼんやりと考えた。
日暮れの里で途方に暮れる、
と、まではいかなかったが
おもてに出たら日はとっぷりと暮れていた。

こんなハズじゃなかったぜ。
不完全燃焼のままに
停めたタクシーの運チャンには
「上野広小路へ!」と告げたのでした。

=おしまい=

「そば彩園 つるや」
 東京都荒川区1\15\1
 03-3891-7099