2015年9月23日水曜日

第1192話 鰊と鯨と穴子と数の子 (その2)

さて、笠戸丸の詳細である。

もともと、この船はイギリスのニューカッスルで建造された、
ロシアの貨客船・カザン号だった。
日露戦争の際、旅順港内で大破しているところを
日本海軍に戦利品として捕獲され、
笠戸丸とネイム・チェンジされたのだった。

日露戦争終結直後、船籍を東洋汽船に移され、
憧れのハワイ航路というわけでもあるまいが
日本からハワイへ多くの移民を運ぶことになる。
その翌年にはブラジルへもー。

あとはもう、イワシ工船だの、魚餌加工船だの、
さんざ、こき使われた挙句に昭和20年8月、
突如、宣戦布告してきたソ連に拿捕され、爆破され、沈没。
そのとき、船内には数名の病人が残されたままだっという。

ロシア船として誕生した笠戸丸。
その数奇の運命にトドメを刺したのが革命・ソ連という、
歴史の皮肉・惨酷、ここに極まれり。

 ♪  つらい話はよそう
  甘いくちづけしよう
  他人同士になる前に ♪
   (作詞:なかにし礼)

裕次郎の「サヨナラ横浜」。
いえネ、先週もわが愛するハマに行って来たんですがネ、
おっと、また横道にそれた。

ともかく、つらいハナシはよそう、
ハナシをエンコの「三岩」に戻そう。

そう、にしん酢であった。
東京の居酒屋からすっかり姿を消したメニューながら、
ドイツ風ビヤホールあたりなら、まだときどき見掛ける。
もっともニシンを好む民族はドイツよりスカンジナビア。
北欧ではとてもポピュラーなニシンの酢漬けなのだ。

そう、そう、笠戸丸を沈めたソ連、もとい、
今ではロシアか・・・彼の地ではウォッカの合いの手に
ニシンの酢漬け(セリョートカ)はこよなく愛されている。
北欧においてもニシンはやはり、
じゃが芋焼酎・アクアヴィットの友なのだ。

ところが、その夕のにしん酢には感心しなかった。
どこか生臭みが漂っている。
これではイケない。
T栄サンを伴ったJ.C.、少なからず狼狽の巻であった。

=つづく=