2016年4月4日月曜日

第1330話 どっこい生きてた レーズンバター (その1)

その日は夜明け前に目が覚めて、しかも目が冴えてしまった。
朝刊を丹念に目を通していたら空腹を感じ、朝食を作る。
といっても8枚切り食パンのトーストとミルクティーだけですがネ。
一応、トーストにバターだけはたっぷりと塗った。
食後、寝不足がたたったのか眠気に襲われ、
歯を磨いて再びベッドにもぐり込む。

もっそりと起き出したのは昼過ぎ。
バスタブに湯を溜めてるあいだに冷たいソーダ水を飲む。
入浴後、またもや訪れた空腹感。
はて、どこに行ったらよかんべサ。

脳裏を横切ったのは出向いたばかりの綾瀬である。
いえ、晩酌に出掛けるのではなく、あくまでも昼めしだ。
前回の綾瀬では「大松」、「串のこたに」とはしご酒。
そのあと当町の気に入り店、
「綾瀬飯店」のことを思い浮かべたものの、
そのまま帰宅の途に着いてしまった。
そうだ! あそこのラーメンにしよう。

久しぶりに「綾瀬飯店」の洗練されたラーメンが食べたくなった。
すでに当ブログで何回か紹介しているから多くを語らないが
とても町の中華屋さんとは思えぬ逸品は
高級中国料理の大店というより、
ホテル内にあるチャイニーズのそれに近い。
たとえばオークラの「桃花林」や
東京プリンスの「満楼日園」のような―。

叉焼など、よくありがちな煮豚ではなく、
ちゃんと紅麹をまとわせた焼き豚だし、
きざみねぎ一つをとっても
青い先っちょを粗っぽく輪切りにするような不心得をせず、
白い部分を細かく微塵にする。

ほぼストレートの細打ち麺は
チキンコンソメにも似たスープとの相性もバッチリ。
このデリカシーが食べ手を魅了するのだ。
何だかんだと結局は薬局、多くを語ってしまった。

14時半に到着するといつものように先客はゼロ。
もっとも時間が時間だからネ。
女将であるお婆ちゃんの素っ気なさと
親切心が同居する接客を受けながら
どんぶり1杯を美味しくいただきハッピー!
どうもごちそうさまでした。

この日は家を出る前から漠然と思っていた。
綾瀬から南へ歩いて葛飾区・堀切菖蒲園へ出張ってみようと―。
綾瀬はるか(まだやってるヨ)、もとい、はるか十数年も以前、
一度だけ訪れた大衆酒場「きよし」を再訪するつもりなのだ。
当時、京成線のガード下にあった店舗は
近年、近所に移転したと伝え聞く。

=つづく=

「綾瀬飯店」
 東京都足立区綾瀬2-23-10
 03-3603-9948