2016年4月13日水曜日

第1337話 チューブばっかり三兄弟 (その1)

満開の桜もほぼ葉桜となって美しさも半減。
振り返れば今年は花見の宴がゼロだった。
こんな年も珍しい。
もっとも日程が合わず不参加となった誘いは
2件ほどありましたけどネ。

ただし1件、不忍池のほとりで親しい友人と二人、
桜の枝越しに水面のボートを眺めながら酒を酌み交わした。
たまたま二人とも浅い時間から都合がついて
それなら今が盛りの桜を愛でようじゃないかとなったわけだ。

缶からプラスチックのコップにビールを注ぎ、再会を祝す。
つまみはJ.C.が買って来た、
「京樽」の穴子寿司にバッテラ。
それと相方が持参した、
「ポール・ボキューズ」のオードヴル盛合わせ。
もうそれだけでじゅうぶんだ。

曇り空の下、まだ空気がひんやりとしている。
ときおり冷たい風が首筋を撫でてゆく。
こちらはともかく、相方の身体が冷えてきたのを潮に
小一時間で切り上げることにした。

その後、上野広小路の居酒屋で一酌に及んだのだが
今度は隣りの卓の酔客たちがやかましく、
「チャンチキおけさ」まで出る始末。
それが上手きゃいいけど、みなド下手。
ここも一時間が限界だった。
結局は薬局、チェーンのイタリアンに上がってキャンティを開ける。
何のことはないこの店が一番落ち着けた。

翌日。
独り、谷中霊園の桜並木を歩む。
途中、出逢った2匹の猫が人なつっこく、しばし戯れる。
彼らは霊園内に棲みつき、
しかも食事を運んでくれる愛猫家が何人もいるというから
幸薄き野良猫とはちょいと違うのだ。

そういやあ、この国にはまだまだ野良猫がたくさんいるが
野良犬は完全にその姿を消しちゃったネ。
子どもの頃、悪さをするたびに大人たちから
「”犬殺しのオジさん”に連れて行かれちゃうヨ!」―
イヤ~な言葉で驚かされたものだ。
子ども心に、いや、子どもだったからこそ、怖かったぞなもし。

霊園を抜けて夕陽の名所、夕焼けだんだんにやって来た。
ここにも常に猫が何匹かいる。
谷中の猫はよく人になついていてお人好し、あいや、お猫好し。
中には呼びもしないのに勝手に向うから近づいてくるヤツまでいる。
地域に住む人々の愛情に育まれてきた証しなのであろうヨ。

=つづく=