2016年4月12日火曜日

第1336話 アイスランドの鯨 (その3)

ナガスクジラの赤身がおよそ250グラム。
まずは薄めに包丁を入れてカルパッチョ仕立てだ。

ニンニクのスライスを添えるて
ヒマに任せて撮影上、
ニンニクをまんべんなく散らせてみたものの、
実際はいったんニンニクにどいてもらったりしながら
いろいろヴァりエーションをつけて味わった。
カルパッチョとなると、第一感は牛肉だが
食味の似ているのは馬肉だ。
 
本わさび、根しょうがは生醤油とともに。
ポン酢の場合は大根おろし&きざみ長ねぎがパターンA。
新玉ねぎのスライス&大葉の繊切りがパターンB。
ホースラディッシュには岩塩。
バルミジャーノ・レッジャーノは
ヴァージン・オリーブオイルといった塩梅である。
 
肝心かなめのニンニクは生醤油の助けを借りるが
胡麻油、もしくはオリーブ油もまたよし。
オイル系には日本の醤油よりフランスの岩塩がまさった。
 
合わせる酒もビール、日本酒、赤ワイン、
はてはマール、ダークラムと多種多彩。
予想した通り、楽しい一夜と相成った。
 
イヌイットさながらにひとしきり生肉を堪能したあと、
半分弱残しておいた鯨肉を
南蛮風のガーリックステーキにしてみると、
これもなかなかだったが生には及ばない。
小学校の給食でなじんだ竜田揚げがチラリ脳裏をよぎったが
こんな良質のクジラにはもったいない気がして忘れた。
 
後日、再び「吉池」で見掛けて即購入。
もちろんアイスランドの村娘、もとい、長須鯨である。
部位の違いからか色合いがずいぶん異なっていた。
何せ体長20メートルもある巨大な鯨だから
あっちゃとこっちゃじゃ違うのも当り前。
ちょっと見はまぐろの中落ちみたいだ。

 い色がより鮮烈
先日のが肉っぽい深紅とすれば、
此度は魚っぽい真紅だネ。
前回はいろいろ試したけれど、手が掛かるため、
今回は本わさびとアイオリ(ガーリックマヨネーズ)の2種のみ。
むろんどちらも Very good!
 
味をしめるとはまさにこのことで
以来、ナガスクジラとランデヴーに及ぶことたびたび。
しかしながらモノがモノだけに
安定的な供給は難しいのではなかろうか。
或る日突然、消えてしまわれそうな不安感がつきまとう。
願わくば、チリのサーモントラウト、
ニュージーランドのラムみたいに定着してほしい。
そう思うほどに素晴らしかった。

=おしまい=