2016年4月14日木曜日

第1338話 チューブばっかり三兄弟 (その2)

あいにくその日は曇りがち。
夕焼けだんだんの上から西の空をのぞんでみたが
さして高くもないビルが何棟か建っているのみだ。

はるか大利根から
見てはいけない西空を見上げた剣豪・平手造酒の目には
江戸へひと刷毛、あかね雲が映ったのだった。
何のこっちゃい? 
首を傾げつつも興味のある方は
三波春夫の「大利根無情」をググッてみてください。

階段を降りて谷中銀座。
平日だから人出はイマイチである。
それでも近頃増えた外国人の姿が目立つし、
メンチカツをウリにしている2軒の精肉店と
格安の惣菜店の前には客たちが
それなりの人だかりを作っている。

100メートルほどの谷中銀座を突っ切れば、
突き当りはT字路、よみせ通りにぶつかる。
右へ行ったら道灌山通り、左に折れると三崎坂。
商店の数がより多くにぎやかな右手に進路を取った。

地方都市の商店街ならとっくの昔に
閉業に追い込まれていそうな老舗が何軒か生き残っている。
大阪寿司の「宝家」、うなぎの「山ぎし」、
ハム・ソーセージと精肉の「腰塚ハム」、
それぞれに元気いっぱいで営業を続けている。
ご同慶の至りというほかはない。

ほどなく 一軒の焼き鳥屋に差し掛かった。
1年前、いや、もう2年近くになるかな?
いずれにしろオープンからさほど経っていないはずだ。
店名は「今一」、”いまいち”と訓ずるのだろう。
どんな経緯で命名したのか存ぜぬが
食べもの屋としては縁起のよい屋号ではない。

実は半月前にここで一酌を喫したのだった。
期待を大きく下回ったため、
当ブログではスルーするつもりでいたが
たまたま再び通りすがったのも何かの縁、
一筆したためることにした。

入店時に先客はナシ。
中年の店主とアルバイトらしき若い女性が
カウンターの内側で手持無沙汰の様子。
意識しすぎかもしれないが
何となく二人に見張られているような気がした。
 


突き出しの枝豆とともにビールが運ばれた。
とにかく焼き鳥を何本か注文しなければ―。
とそのとき、一組のカップルが来店して
ホッと一息ついたJ.Cなのであった。

=つづく=