2016年5月11日水曜日

第1357話 あの味がよみがえる (その1)

先日、ザ・プリンス パークタワー東京における、
元部下の結婚披露宴(第1218~1223話)に出席したおかげで
東京プリンスホテルの四月から1年間に及ぶ、
リノヴェーション休業を知ることができた。
おまけに三月いっぱいホテルの伝統料理を
復刻させる催しについての情報も得たのだった。

三月も残り数日となったある日、万難を排して出掛けた。
この日の相方は往年の仕事仲間、Y美サンである。
往時はY美、Y美と呼び捨てにしていたが
今はお孫さんが3人もいるというから
そんな非礼は厳に慎まねばならない。

横浜方面からやって来る彼女の都合を慮って
待合わせはJR浜松町駅にした。
足さばきも軽やかに改札口を出てきた、
尊顔を拝するのはおよそ15年ぶり。
にもかかわらず、容貌の変化はほとんど認められない。
ふ~む、日頃のケアの賜物なんだろうネ。

人の目も気にせず、
電車内で顔面塗装に励む愚女たちに言ってやりたい。
今さら無駄なことはおやめ!
いや、やってもいいけど、
人目につかないところで存分におやり!

ホテルまでは徒歩5分。
こちらはときどき訪れる町につき、
これといった感慨はないけれど、
Y美サンにとっては20年ぶりの町並みだ。
景観がずいぶん変わったものとみえて
歩きながらも終始キョロキョロの巻である。

そうして到着したのは東プリ3Fのレストラン「PORTO」。
カジュアルなブッフェを中心としたイタリアンである。
日曜なので浅い時間の予約を入れたのが正解。
開店30分後の17時半には8割方埋まってしまった。
18時過ぎには隣国の団体客が来襲し、
天地をひっくり返したかの如くの”爆食い”が
その火ぶたを切ったのだった。
おお、神よ!

「PORTO」はホテル開業当時(1964年)、
「グリル・プリンセス」という名のメインダイニング、
いわゆるシティホテルの顔だった。
その後、フレンチの「ボー・セジュール」に変身したが
ホテルにおけるフレンチの衰退とともに現在の姿に定着。
往時の栄華を知る者の心にすきま風を吹かせている。

=つづく=