2016年5月25日水曜日

第1367話 狸が呼んでるそば屋 (その2)

もう、その歌声を識る人とてめっきり数を減らした三橋美智也。
1955年には出世作、「おんな船頭唄」をはじめ、
「あゝ新撰組」、「あの娘が泣いてる波止場」と
立て続けにヒットを飛ばす。

翌年の「リンゴ村から」、「哀愁列車」に上手く継いで
人気歌手の座を不動のものとした。
代表曲の「古城」はまだしばらくあとの登場となる。

生前の立川談志は言っている。
もしも三橋が私生活を律し、余計なビジネスに手を染めず、
ひたすら歌の道に邁進していれば、
美空ひばりに匹敵する国民的大歌手になったであろうと―。
さもありなん。

脇道からメインストリートに戻る。
鎌倉のP子からのメールで思い出したんだった。
「大和屋」にイパネマ、もとい、行かねば―。
でもって、ことの経緯を差出人に説明し、
こまごめしたこた抜きにして駒込まで遠征願った次第である。

何のこたあない、鎌倉のかき揚げを馳走になる前に
駒込のかき揚げを振る舞うことになったわけだ。
萩本の欽チャンじゃないけど、何でこうなるのっ?

相方はJR京浜東北線で来襲に及ぶとのこと。
遠路はるばるやって来るのだ、
乗り換えの煩わしさを省いてやるため、
駒込でなく、田端で待ち合わせた。

田端駅北口を出たら都内では珍しい、
鎌倉にも似た切通しを突き抜けて動坂下を目指す。
坂下の手前を右折してほどなく、
しばらくぶりのタヌキと再会を果たした。

 ♪   逢えなくなって  初めて知った
   海より深い 恋心
   こんなにあなたを 愛してるなんて
   あぁあぁ鴎にも わかりはしない ♪
          (作詞:佐伯孝夫)

松尾和子の「再会」を聴いたのは小学校三年生のとき。
東京五輪の4年前、ローマ五輪の年だった。
この1960年には橋幸夫が「潮来笠」でデビューして
花村菊江の「潮来花嫁さん」と相まり、
ちょいとした潮来ブームが起こったのだった。

ほかにも「月の法善寺横町」、「僕はないちっち」、
「雨に咲く花」、「アカシヤの雨がやむとき」など、
心に残る名曲の数々が生まれている。

=つづく=