2016年6月9日木曜日

第1378話 北区の旅人 (その8)

この日は昼下がりに駒込の日本そば屋「大和」で始まった。
その後、東十条の大衆酒場「新潟屋」を経て
ようやく終着点の赤羽「まるよし」に到達。
ここもまた大衆酒場である。

細いコの字形カウンターの左奥に横並んでいる。
この店には何度も来ているが
いつもこの辺りに誘導されるので背中と壁のあいだが狭い。
右サイドならその右が小上がりだから
背後を気にしなくともいいんだけど―。

最初のつまみはキャベ玉、当店の定番である。
もちろん居酒屋でも家庭でも
ポピュラーなニラ玉がベターなれど、
これはこれでシンプルな味わいがあってよろしい。

二人して壁に貼りめぐらされた品書きを見上げた。
相方が食指を動かしたのは玉ねぎフライだ。
これまた「まるよし」の人気メニュー。
J.C.にとっても”来れば頼む”の一品だから
異存があるはずもなく、スジのいい選択に感心した次第なり。

キャベ玉&玉ねぎフライ。
ずいぶんと庶民的な景色となった。
本来は「まるます家」において
鯉のあらい&鰻の蒲焼きで少々リッチにいく計画。
変われば変わるものである。

昔読んだ松本清張の時代小説によれば、
江戸下町の町人が大川べりの川魚料理屋に行ったら
普段は鯉こく&どんぶり飯のところ、
フトコロが温かいときは鰻丼にレベルアップしたらしい。

飲みもののお替わりをした途端、
ついさっき「新潟屋」で食べたばかりの焼きとんが欲しくなった。
まずはカシラを塩で2本お願い。
一体、どうなってんねん?
しかし、このカシラ、噛み応えが奥歯に快い。

続いてシロとレバをタレで2本づつ。
こちらもなかなかである。
レバといえば、まるよし名物のレバ刺しをしばらく見掛けない。
北陸の富山だったかな?
焼肉屋で中毒を出して以来、
当局の厳しいお達しにより、扱う店舗が自粛を続けているのだ。
お互い、生のレバはそれほど好きじゃないから、まっ、いいか。

夜も更けて長かった一日は終焉を迎え、お開きとした。
赤羽からはあちら埼京線、こちら京浜東北線、
右と左の泣き別れである。
盟友の未来に幸多かれと祈りつつ、
車両の窓ガラス越しに手を振った。

=おしまい=
 
「まるよし」
 東京都北赤羽1-2-3
 03-3901-8859