2016年6月24日金曜日

第1389話 めったに行かないホルモン焼き (その3)

テグタンとコムタン。
何やら北朝鮮のテポドンとムスダンみたいだが詳しくは知らない。
「どっちも牛肉のスープで、テグは赤、コムは白なんじゃないの」―
適当に大雑把な応えである。
 
「コムタン頼んでいいかな?」―遠慮がちな相方のリクエスト。
「もちろん!」 ―却下する理由など何もない。
どうぞ、どうぞ、てな感じだ。
 
数分後、どんぶりが湯気を立てて運ばれた。
小碗に取り分け、スープを味わうS川サンが
あんまり美味しそうな表情を浮かべるので
おすそ分けにあやかる。
ミノにせよ、コムタンにせよ、
独りで来てたらまず注文していないだろうヨ。

白濁したスープには牛骨から出たエッセンスが凝縮。
タイプとしては長浜や博多のとんこつラーメンに似ている。
横浜の”家系ラーメン”より、よほどスッキリしている。
個人的に長浜はいいけど、横浜はイヤだネ。

「ライス頼んでいい?」
「もちろん!」
さっきと同じQ&Aが繰り返された。
いや、実によく食べるお人やねェ。
こちらは感心しながらバイス用の金宮だけを追加注文。

薄紅色の液体を飲んでいて思った。
こりゃ通常のスタイルよりもよっぽど酔いが回りやすいなと―。
シャーベット状の焼酎が氷の役目を兼任するため、
ジョッキの表面に浮き上がってくる。
したがってアルコール度数は
上のほうが底より高い仕組みが生まれる。

調子に乗ってガンガン飲ったらトンデモないぜ。
ホッピーより飲み口がソフトなだけに
バイスやレモンサワーは要注意だ。
殊に酒になじみの薄い女性なんか、ひとたまりもあるまい。
挙句、帰りの電車で泥酔して
お姫様だっこされないように気をつけないといけない。

しかし、ああいった事件は
当然、犯人が悪いんだが被害者もかなりのアホだネ。
そして誰と飲んだか知らないけれど、
もしもカレシだったらカノジョをそこまで
酔わせてほったらかしにしたソイツは輪をかけたアホや。

勘定はちょうど1万円ほど。
けっして高くはなくとも安くはない。
健啖家にはそれなりの満足感が残ろうが
”食う”より”飲む”ほうに軸足を置く向きには
使い勝手がよいとはいえない。

つくエキ駅前にある24時間営業の食堂で
生ビールを1杯づつ飲んでお開きとした。

=おしまい=

「西日暮里ホルモン」
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