2016年6月16日木曜日

第1383話 しかたなく秋葉原 (その5)

 「赤津加」の赤貝酢には少々不満が残った。
それはそれとして
さすがに2本目の大瓶はガタンとペースが落ちる。
時間がゆったりと流れ、
空間は秋葉原にいることを忘却させる。

この店の気に入り料理は昼なら山かけと天ぷら。
夜は白身の刺身に鶏もつ煮込みと笹がれいだ。
本日のオススメは、いさき・あいなめ・ひらめのトリオで
不可解なことに微差ながらひらめがもっとも安価。

こんなことがあるんかいな。
ひらめは白身の王様じゃあ、ないのかえ?
マイ・フェイヴァリットとなれば
ひらめがキング、かわはぎがクイーン、こちがジャックだネ。
この時期だとキング、クイーンはパッとしないが
ジャックはすばらしい。

いろいろ考えた末、白身は見送ることにする。
かといって刺盛りなんぞ多すぎて高すぎて手が出ない。
まぐろの中とろやぶつにも食指は動かない。
オススメの鯛かぶら蒸しや定番の鶏もつ煮込みはちと暑苦しい。
季節柄、はもの天ぷらかすずきの揚げ浸しがピタリとくる。

今宵は時間がたっぷりあって、わが思いのまま。
ビールのあとは日本酒でいこう。
「赤津加」は菊正宗の品揃えが豊富で

本一合(500円) 冷酒(580円) 
生酒300ml(930円) 吟醸300ml(1260円)
 
といったラインナップ。
ここは冷酒で、はもの天ぷらだろうなァ・・・
のどかに考えていたときだった。

泰平の 眠りを覚ます上喜撰  たつた四杯で 夜も眠れず
 
いきなり四杯の蒸気船が平和な港に出現したのだ。
それもずいぶんと騒がしい入港であった。
まっ、ここまではよくあること。
ところが何をとち狂ったかその四人、
J.C.の隣りにカドカドで陣取ったではないの。
 
その際のリーダー格の言いぐさがまた奮っている。
「あえてカウンター!」だとヨ。
おいおい、テーブルも小上がりも空卓だらけだぜ。
頼むからそっちへ行っておくれ。
 
願いむなしく彼らは生ビールでにぎやかに乾杯の巻であった。
あのネ、カウンターはネ、ソロかデュオ限定なのヨ。
せいぜいトリオまでで、カルテットは勘弁してほしいんだわサ。
 
=つづく=