2016年6月15日水曜日

第1382話 しかたなく秋葉原 (その4)

秋葉原にはもったいないくらいの佳店「赤津加」。
その止まり木に止まっている。
この街によくぞこれほどの店が生まれたものだ。
掃き溜めに鶴とまでは言わないが鶏群の一鶴、
あるいは珠玉の瓦礫に在るが如し、であろう。

腰を落ち着けて1分と経たないまに
早くも大瓶の残りがわずかとなった。
突き出しは酢の物である。
素材は青柳(バカ貝)の小柱にわかめときゅうり。
下地はかつお出汁の利いた土佐酢だ。

大瓶を追加しておいて品書きに目を通す。
せっかくだから当日のオススメだけでも紹介しておこう。

刺身―いさき(1300円) あいなめ(1250円) ひらめ(1150円)
赤貝とトマト酢の物(950円) きびなごサラダ仕立て(880円)
はも天ぷら(1080円) 鯛かぶと酒蒸し(980円) 鮎塩焼き(920円)
すずき揚げ浸し(920円) そら豆(800円)

ついでだから常備のメニューも書いちゃおう。

刺身―盛合せ(2260円) 中とろ(1300円) まぐろぶつ(920円)
     たこぶつ(880円) するめいか(880円)
鶏もつ煮込み(820円) 笹かれい(920円) 穴子照り焼き(920円)
天ぷら(920円) まぐろぬた・山かけ(各780円) 串かつ730円
焼き鳥ねぎま(530円)

といった塩梅である。

最初に選んだのはオススメから、
赤貝とトマト酢の物である。
これは突き出しの小柱酢に刺激を受け、
もっと欲しくなり、あえてかぶらせたのだった。

すると、驚いたことに今度は土佐酢ではなく、
三杯酢で来たじゃないか!
ともに貝が主役の酢の物なのに下地を変えるとはねェ。
ふ~む、さすがといえばさすがですなァ。

と、ほめたたえてばかりもいられない。
何となればこの赤貝酢、あまりにも貧相なのだ。
確かに赤貝は、殊に国産の本玉は極めて高価。
それはじゅうぶんに承知していても千円近くするんだヨ。

トマトとの相性も疑問で
少量の赤貝の相方に置いといて
カサを増やしているに過ぎないのではなかろうか。
優良店としてはちょいとアヤをつけた感が否めない。

=つづく=