2017年7月7日金曜日

第1661話 大森で小盛り上がり (その1)

大田区・大森は小学校時代を過ごした思い出の土地。
2年近くごぶさたしていたが、ふと訪れたくなった。
実際に棲んでいたのは京浜急行・大森海岸駅と、
その南の平和島駅の中間辺りだ。

降り立ったのはJR京浜東北線・大森駅だった。
小腹が空いていたので待合せの前に
何か軽いものをというより、軽く一杯の目論見だったが
生憎、これといった店が見つからない。

駅南側のアーケード、
大森海岸方面に向かう商店街を歩いていると、
目にとまったのは1軒の惣菜屋である。
京都あたりの老舗漬物店をしのばせる店構えは
惣菜や弁当を商うにそぐわない風格に満ちていた。

屋号は「柏庵(はくあん)」。
店頭を冷やかす程度のつもりが
つい、内に足を踏み入れていた。
パックの惣菜を見ただけで
スーパーやチェーン弁当店のそれとまったく違うのが判る。
手作り感が伝わってくるのだ。
これから持ち歩くわずらわしさを厭わず、
買い求めたのは八宝菜とコールスローの2パックなり。

大森駅で待合せた相方とぶらぶら歩き始めた駅東口。
普段の行いがいいんだろうねェ、かっこうの場所に遭遇。
コンビニのセブンイレブンである。
セブンにしろ、ミニストップにしろ、
イート・イン可能なコンビニは少なくないが
当セブンにはウッディーなテラス席が設置されていたのだ。

まさしく渡りに舟、一憩にテラスである。
店内で冷たいビールを調達し、
いそいそとテラス席に腰を落ち着ける。
いや、けっこう、けっこう、うれしいな。

ビールの合いの手の八宝菜は
優良中華料理店の水準に達し、
コールスローもセブン自体やケンタッキーの上をゆく。
加えて飲食物の持ち込み云々を問われる懸念もない。

しばらく幸せなひとときを過ごし、
向かったのは先刻の「柏庵」からそう遠くない「蔦八」。
かつては大森を代表する大衆酒場が後継者に恵まれず、
閉業したのを飲食店を数軒手掛ける現オーナーが
引き継ぐかたちでリオープンさせたそうだ。

なるほど、コの字カウンターは昔のまんま。
変わったのは中で立ち働くスタッフだけだ。
若年から中年にかけての女性ばかりになった。
もっとも若い客にはこっちのほうが歓ばれるかもネ。

=つづく=

「柏庵」
 東京都大田区大森北1-29-1
 03-3298-0015