2017年9月5日火曜日

第1693話 夕暮れの第一国道 (その3)

JR国道駅の真下にある「国道下」。
店の奥、と言ってもたかだか奥行数メートルしかないが
周りのお客さんの協力のおかげで
どうにかテーブルに席を確保してもらった二人。
キリンの生ビールでホットと一息ついた。

カウンターの中にはママが独りきり。
居酒屋の女将というよりスナックのママといった感じだ。
いくら狭くとも一人での切盛りは生半可なことではない。
長っ尻(ちり)は少なそうだから
入れ替わり立ち代り客が押し寄せる。
酒に料理に会計に八面六臂のご活躍である。

それにしても居心地がよいとはお世辞にも言えない。
われらは穴ぐらに押し込められた狸の番(つがい)の如し。
狸たちは取りあえずポテトサラダを注文した。
もちろん作り置きである。
その皿をカウンターの客が中継してくれた。
リンゴ入りのポテサラは口に合わないが
女性はこのタイプがお好みらしい。
相方はパクパクとやっている。

ジョッキのお替わりとともに牛もつ煮込みを追加。
これまた可も不可もナシ。
ロケーションとアトモスフィアで持つ店に長居は無用だ。
当店は飲み食いするよりも
訪れることに意義のある店だろう。

早々に2軒目へと移動する。
京急線で一つ先の生麦駅に近い「大番」は
界隈随一の人気を誇る立ち飲み酒場だ。
「国道下」から第一国道を南へ歩くこと10分で到着した。

店内は意外に空いており、立ち位置を容易にゲット。
ここでは瓶ビールを所望した。
銘柄はもちろんキリンラガーだ。
相方はレモンサワーだったかな?
立ち飲みもまた一興である。

「国道下」も「大番」も生麦河岸商店街から至近距離。
魚介の質・鮮度に間違いはあるまい。
先刻は生モノを注文しなかったから
最初に小肌酢とまぐろブツをお願いした。
どちらも水準を軽くクリアしている。
こんな店が都内にあったら大変な賑わいになろう。

「大番」も回転率が高い。
もっとも回転しなかったら立ち飲みの効力はない。
株式市場に上場をはたした「いきなり!ステーキ」だって
立ち食いのアイデアが功を奏した上での成功だからネ。

=つづく=

「国道下」
 神奈川県横浜市鶴見区生麦5-12-14
 045-503-1078