2017年9月12日火曜日

第1698話 一日違いの土用丑の日 (その4)

”本日 土用丑の日”
貼り紙のせいで天丼から鰻重に変更の巻。
下拵えは済んでいてもなお、20分ほど要する由。
別段、急ぎでもないから諒とする。

待つ間、店内の様子をさりげなくうかがったり、
品書きに目をこらしたり。
先刻、生ビールを飲んできたというのに
今度は瓶ビールを楽しんでいた。
浅草から上野にかけては好みの銘柄の勢力圏である。

金2600円也の鰻重はほどよいサイズ。
中ぶりの鰻が丸一尾、ごはんの上に鎮座している。
焼きムラもなく丁寧なシゴトが施されていた。
まずはシモ(下半身)から箸を入れる。
鰻本体はけっこうな仕上がり。
惜しむらくはタレが甘ったるくて、もうちょいキレがほしい。

肝吸いはまずまず。
奈良漬け、きゅうりぬか漬け、キャベツもみ、
3種の香の物にも手抜かりはない。
総合的に評価して及第点をクリアしている。

ところが、ところがであった。
帰宅して何気なしに当たってみると、
土用の丑の日は当日じゃなく、その翌日。
するってえと、あの貼り紙は翌日のランチ用かえ?
何だヨ、そんなのありぃ?
(最近、こればっかりですいやせん)

引っ掛かるなァ、心残りだねェ。
どうにも気がおさまらない。
数日後、稲荷町「天三」に再び、
J.C.の姿を見ることができた。

同じようにカウンターに着き、
同じようにビールを飲んでいた。
鰻重の20分に対して
季節の天丼は10分足らずで整う。
価格も半分以下の1200円である。

穴子丸一尾・海老二尾・きす一尾・
なす・いんげん・ヤングコーン
陣容は以上。
真っ黒と表現しても過言でない濃い丼つゆに
ドブンと浸けられたのが白飯に盛られている。
脇はとうふ&わかめ味噌碗、たくあん、キャベツもみ。

ふ~む、味わいは浅草のクラシカルな天丼だネ。
ただし、コロモは浅草にありがちなフリッターではない。
こちらのほうが好みに合致する。
やはり餅屋では餅、天ぷら屋では天丼、
それが外しちゃならない常識でありました。

=おしまい=

「天三」
 東京都台東区元浅草2-8-8
 03-3842-6464