2017年9月14日木曜日

第1700話 浅草カーニバルの夜 (その1)

お世話になった人の誕生日を祝うため浅草へ。
ゲストに何が食べたいのか問うと、
お鮨がいいと言うので
浅草は「弁天山美家古寿司」に予約の電話を入れた。
折悪しく、その日は店が夏季休暇に入っており、
1週ずれ遅らせて席を確保することができた。

その際、電話に出たオニイさんの言うことに
「カーニバル当日なので店の周りはスゴい人ですが・・・」
そう、打診されたのだが
いいでしょう、いいでしょう、おジャマしますとも。
パレードの踊り子が店内に侵入するわけでもあるまいし。

案内された席はつけ台の左隅、五代目親方の正面である。
その隣りでは六代目が補佐役にまわっている。
「お飲みものはお茶でよろしいですか?」―
五代目の第一声は常にこれである。
基本的に酒類をあまり売りたがらないというか
酔客を歓迎しない姿勢は「美家古」の伝統なのだ。

それでも最近は厳選した日本酒を取り揃えるようになった。
昔の「美家古」はつけ台の右端に
大関の樽酒がド~ンと置かれていたものだ。
いや、懐かしいなァ。

初めてこの店を訪れたのは1978年。
ちょうど隅田川の花火が復活した年である。
入店したとき、
四代目がつけ台に背を向けて玉子を焼いていた。
あのうしろ姿は今でも忘れられない。

ビールでハッピー・バースデー!
突き出しはかつおの角煮だ。
ほかにつまみを取らず、にぎりでスタートする。
多彩な鮨種を効率よく味わえるコースが
何種類か用意されているけれど、
いつもお好みでにぎってもらう。

「われわれ同じものをいただくのでお好みでお願いします」
J.C.の常套句がこれだ。
このスタイルでいくと、職人さんはシゴトがしやすいハズ。
それも2種づつ通してゆく。

口切りは平目昆布〆&きす。
平目昆布〆は「美家古」の定番中の定番。
昔より〆がやや深くなり、昆布の旨みが蓄積されている。
皮目を残したきすは繊細の極みにして
薄紅色のおぼろがカマされていた。
好もしい江戸前シゴトと言えよう。

いつものことながら上々のスタートを切ることができた。
桐生選手のスタートも常にこうであってほしい。
隣りを見やると、相方の頬のたるみ、
もとい、ゆるみにも拍車がかかってきたぞなもし。

=つづく=