2017年9月18日月曜日

第1702話 浅草カーニバルの夜 (その3)

 「弁天山美家古寿司」でにぎり鮨を楽しんでいる。
東京を代表する江戸前鮨店は馬道(うまみち)に面しており、
この通りは浅草カーニバルのメインストリートなのだ。
ようやく喧騒がおさまり、静寂がおとずれた。
やれやれ。

ふと思い出したのは10年近く前のこと。
当時、小唄を習っていたJ.C.は
月に二度ほど浅草の稽古場に通っていた。
ある日、稽古日とこのカーニバルがガッチンコ。
騒音如何ともしがたく、稽古不能に陥ったことがあった。

さて、10、11カン目は車海老&たいら貝。
オドリでいただけるほどに
上質の車海老を茹で上げてあるが
熱の通しはもうちょいと浅いほうが好みだ。
同じ浅草の「鎌寿司」は半生状態で出される。
とは言ってもさすがに旨い。
ここにもおぼろがカマされていた。

たいら貝の正式名称はタイラギ。
見た目そっくりの帆立貝柱はほぼ円形だが
こちらはよく見ると、
少々湾曲して天豆(そらまめ)のカタチに似ている。
サッと湯通しした霜降りで供された。
やはり夏場の貝に強い印象は残らない。

にぎりはここでペースダウンして
遅ればせばがらの日本酒に移行。
当方は福岡の上を向いて歩こう、
相方は山形の栄光富士、
ともに純米吟醸である。

一服したのち、12、13カン目は煮いか&蒸しあわび。
いわゆる煮ものである。
「美家古」伝統のシゴトをなされた煮いかは歯ざわり快適。
煮つめのコクが際立っている。
使用されているのはするめいかだ。
 
蒸しあわびには煮つめでなく煮切りが一刷毛。
やはり夏の貝とて、上々であった。
ちなみに当店に生のあわびはない。
あわびはすべて蒸しの一シゴトが施されている。

ケースに並んだ鮨種はみな目視で認知できたが
唯一の例外があった。
白身のようでいて青背であることは判る。
しかし皮目を下側にしてあるので容易に判断しかねた。
かんぱち、ひらまさ、縞あじのいずれかと推測されたが
五代目にうかがうと、はたして縞あじであった。

=つづく=