2017年9月7日木曜日

第1695話 一日違いの土用丑の日 (その1)

八月初旬のある日。
午前中に所用を済ませてフリーの身になった。
どこへ行こうが、何をしようが、思いのままだ。
靖国神社に詣でたわけではないが出発点は九段下。
そこから神田神保町、水道橋、本郷を経て
切通しの坂を下り、到達したのは湯島天神下である。

時刻は14時半過ぎ。
春日通りを東に歩めば上野広小路は目と鼻の先。
中休みのない「井泉本店」で一飲に及ぼうか?
空腹感はまったくないからとんかつはムリでも
好きな蟹ときゅうりのサラダが待っている。

でもねェ、とんかつ屋のカウンターで
かつを食わずにサラダとビールってのもなァ・・・。
周りの客から
(この人何モノ? 明るいうちからビール飲んでて―)
白い眼で見られそうな・・・そんな気がしないでもない。

結局は薬局、またしても気に入りの「味の笛」へ向かう。
サカナのデパート、「吉池」の直営店である。
本家「吉池」の鮮魚コーナーでお茶を濁してから入店。
2階の椅子席へと螺旋階段を上った。
頭の中を桂銀淑の「夢おんな」の歌い出しが・・・

  ♪  螺旋階段 昇る靴音で  ♪

いや、やめよう、やめよう、やめとこう。
当ブログは挿入歌が多すぎるからネ。
ここはグッと我慢の子でいこう。

開店まもないため、店内は空席だらけだ。
禁煙席と喫煙席の境い目にある定席も空いている。
プラコの生ビールを手に落ち着つく。
半分ほど飲んでカウンターに並ぶつまみを物色した。

十全なすを記した短冊が下がっている。
今年もこの季節がやって来た。
新潟名物の小ぶりのなすは大好きなのだ。
まずはこれから。

なす紺に練り芥子の黄が小粋に映える。
たった200円の小皿がやけに美しい。
生ビールによし、冷酒によし。
焼酎のロックにだってよい十全なすである。

2杯目の注文と同時にあらためて小皿類を再点検。
初対面の珍品が目にとまった。
”別海バターたっぷり赤巻きかまぼこと青ねぎ炒め”
ほ~う、別海バターってか?
別海・・・べっかいねェ・・・どこかで聞いたぞ。
記憶の糸をたぐり始めたJ.C.であった。

=つづく=