2017年10月12日木曜日

第1720話 鰻や穴子の舞踊り (その5)

自由が丘の「ほさかや」にて鰻の串焼きやら、
レバーの塩蒸しやら、煮凝りまで食べたのに
数軒隣りの「金田」では穴子の唐揚げを待っている。
松尾芭蕉に無分別を叱責されそうだ。
 穴唐や 鰻串食ったに 無分別
ハイ、すんません。

おっと、穴子の端正な一皿が運ばれた。
ほぼ同時に左隣りの相方の、そのまた左に
妙齢のご婦人が独り着席したではないか。
この店に女性独りで現れるとは大した度胸だ。
というか、常連サンに違いあるまい。

いや、こうなると相方は穴子どころじゃないネ。
穴子の皿なんかそっちのけだもの。
意識が100%、左に寄っている。
数学において乗除は加減に先立つが
心理学だとオナゴはアナゴに先立つんだ。

おやおや、こっちが穴唐1切れ食べる間もあらばこそ、
早くも話し掛けちゃってるぜ。
興奮のあまり、大声出して
また若女将にイエローカード切られるんじゃないかと、
こちとら気が気じゃないヨ。

とか何とか言いながら結局は薬局、
数分後には3人での談笑と相成りました。
だってハナシを振られたら受け答えはするでしょ。
でも他人のことをとやかく言えないネ。

ご婦人は隣り町の奥沢に在住するセレブな奥様。
30分少々のご滞在であった。
われわれも速やかにお勘定。
「ほさかや」同様に6千円くらいだった。

母娘の接客ぶりにあらためて気が付いた。
ひょっとしたら、いや、おそらく、
「金田」の目指すところは大塚「江戸一」じゃないだろうか?
店内の空気にも客層にも
「江戸一」ほどの洗練はないが手本とする方向は正しい。

これにて終着と断じて駅方向に向かうと、
H谷サンがもう1軒立ち寄りたいと言う。
いいでしょう、いいでしょう、おつき合いしましょう。
駅そばの自由が丘デパート内にあるバー「Z」に赴く。
本日三度目の乾杯はマイヤーズのロックだ。
ジャマイカ産のダークラムである。

なおも歓談することしばし、お替わりをお願いすると
ボトルはすでにカラになっていた。
それではとジン・ソーダを所望するも
銘柄までは覚えちゃいない、ゴードンだったかな?

小腹が空いたようで
ママに五穀米の小さなおにぎりを作ってもらったらしいが
このあたりもよく覚えちゃいない。
お開きになったのは23時過ぎ。
酔いが回ったのか、降車駅を3つも乗り越して帰宅する。
いやはや、チカレたビー!

=おしまい=

「金田」
 東京都目黒区自由が丘1-11-4
 03-3717-7352