2017年10月19日木曜日

第1725話 思い出の町 柳橋 (その1)

この日の散歩はJR上野駅から。
人波でごったがえす新宿、池袋、渋谷、東京、
そして近年は品川駅まで、
こういうところへは用がなけりゃ行きたくもないやネ。
その点、大きなターミナル駅なのに
上野だけはどこかのんびり感を漂わせている。

その空気が好きなせいか、
ここを散歩の起点や終点にすることたびたびである。
上野恩賜公園、不忍池から谷根千に抜けたり、
稲荷町、田原町を経て浅草方面へ行くのにも便利。
広小路、湯島から本郷へ、
あるいは秋葉原から神田という選択肢もある。
双六に例えれば振りだしみたいな土地柄なのだ。

JR上野駅はやたらめったら出口が多い。
正面玄関口から時計回りに
広小路口、不忍口、西郷口、山下口、公園口、
入谷口、東上野口、浅草口と、大変な数である。

そのうち最もさびしいのは入谷口じゃなかろうか。
岩倉高校や上野学園の生徒のほか、
利用する乗降客があまりいないように思われる。
東上野や北上野、入谷方面につながっていても
道行く人の数はタカが知れている。

その入谷口を出た。
進路を東に取り、昭和通りを渡る。
上野警察と台東区役所の間をすり抜けて稲荷町方面へ。
このまま行くと浅草に行き着くが方向を少しく南に修正する。

都営大江戸線・新御徒町駅そばの佐竹商店街にやって来た。
都内屈指のレトロ感に満ち満ちたアーケードをゆく。
時刻は12時半を回って少々腹が空いてきた。
そろそろどこかに入ろうか―。

コロペットなるユニークなコロッケがウリの洋食店は
いつの間にか閉業して居酒屋だったかな、
ほかの店舗に取って代わられている。
時代遅れの喫茶店兼食堂「白根屋」の前でしばし逡巡。
久々だから入店したいが残念ながらここにはビールがない。
よって見送り。

鳥越のおかず横丁は営業している店がほとんどない。
考えてみりゃ、今日は祝日だった。
例大祭の千貫神輿で世に知られる鳥越神社も人はまばら。
境内には入らず、浅草橋へと向かう。

ニューヨークから帰国してすぐに棲んだのは台東区・柳橋。
10年以上の月日を過ごした。
利用した最寄り駅はJR総武線と都営浅草線が走る浅草橋だ。
新店を除いて駅周辺の飲食店はほとんど訪れている。
胸の奥からなつかしさがこみ上げてきた。

=つづく=