2017年10月24日火曜日

第1728話 思い出の町 柳橋 (その4)

台東区・柳橋の洋食「大吉」。
カウンターで独り、遅い昼めしを食べている。
ボリューム満点のAランチだ。
けっこうなサイズのポークソテー&メンチカツに
盛りのよいライスとわかめの味噌汁の組合わせ。
冷めると味の落ちるソテーを先に
それからメンチを食べ終えたところだ。

卓上にはウスターと中濃のサフランソース。
食材紹介のパンフレットには
当店では1970年の創業以来使っており、
昭和天皇の好んだソースとあった。
ふ~ん、醤油は判るが
先帝はソースもお好きだったんだねェ。

なおもパンフレットを読み進めると、
フライ用の海老はブラックタイガーのワンランク上、
ホワイト海老を使用している由、
ヘエ~ッ、こだわってるなァ。

ホワイトとブラックはともにクルマエビ科の海老ながら
決定的な違いは前者が天然モノであるのに対し、
後者は養殖モノということ。
養殖技術の向上のおかげで
ブラックタイガーはもとより、バナメイですら
東南アジアやインドの海老は美味しくなった。
とにかく海老は重要な食材だ。
何たって日本人は世界に冠たる海老好き人種だからネ。

食後、柳橋1・2丁目を散策する。
祝日のこととて行き交う人は少ない。
20年前に棲み始めたときにはすでに
零落を極めていた花街を今さら嘆くこともあるまいが
あらためて思う。
夢破れて山河あり。
障子破れてサンがあり。
だけど滅びの美学を地でゆくこの町が好きだ。

  ♪    だけどわたしは 好きよこの都会(まち)が
     肩を寄せあえる あなた・・・あなたがいる
     あなたの傍で あゝ暮らせるならば
     つらくはないわ この東京砂漠
     あなたがいれば あゝうつむかないで
     歩いて行ける この東京砂漠      ♪
           (作詞:吉田旺)

クールファイブの「東京砂漠」は1976年のリリース。
この名曲がオリコン19位どまりとは未だに信じられない。

たっぷりと1時間、さして広くもない思い出の町をめぐった。
肩を寄せあえるあなたがいなくとも、この町が好きだ。

=おしまい=

「洋食 大吉」
 東京都台東区柳橋1-30-5
 03-3866-7969