2017年10月25日水曜日

第1729話 ちゃぶ台で一献 (その1)

散歩の道すがら、谷中は三崎坂上に
「のんびりや」を見つけたのは数ヶ月前。
カフェ風の店舗はいかにも昭和レトロ、
それも近頃流行りの偽レトロではない、
本格的な佇まいに惹かれるものがあった。

半年ほど前、ちょうど桜の季節に紹介した、
日本そばの「慶喜」、さくら餅の「荻野」のそばである。
佇まいもさることながら
店頭のメニューの内容がユニークで
一訪の価値あり、と判断したのだった。
判断したのだが、それから何カ月も経ってしまった。

一夜、旧知の友、T栄サンを誘って訪れた。
入ると右手に二つのテーブル席。
その一つではヤングカップルが酒を酌み交わしている。
もう一つはに入口に近すぎてほとんど道端だ。

さいわいにも案内されたのは左手の茶の間。
丸いちゃぶ台が置かれ、TVではDVDだろうが
トム・クルーズの「ミッション・インポッシブル」を放映中。
音は絞ってあるから会話のジャマにはならない。

奥にそこそこのスペースの座敷があるようで
ときおりざわめきが流れてくる。
グループの宴会真っただ中といった様子だ。
ときどき子どもたちが茶の間に侵入してきて
TVの前にちょこんと座ったりもする。

乾杯のビールはサッポロラガー、通称・赤星。
このタイプの店は赤星を置くところが多い。
レトロ感を醸すに恰好の銘柄だが
最近はしょっちゅう見掛けるから効果は薄れてきている。

つまみはまず、自家製ローストポーク。
醤油ベースのオニオンソースがあしらわれている。
脇にはパプリカと水菜のサラダ。
オッサンには単なる繊切りキャベツでじゅうぶんでも
女性はこのほうが歓ぶのだろう。
主役のローストポークは悪くなかった。

続いてもう一品は牛すじと大根の赤味噌煮。
玉こんにゃくと牛蒡が同居している。
ふ~ん、牛つながりで牛すじに牛蒡というわけか。
アジなまねをしやがる。

アジなまねはともかくも味がよかった。
こりゃ、素人のシゴトじゃあないぜ。
あらためてスタッフを見やると、30歳前後の男女二人。
夫婦かどうかは判断しかねるものの、
情の通じたペアとお見受けした。

=つづく=