2017年10月30日月曜日

第1732話 私を森下に連れてって (その2)

地下鉄・都営新宿線の開通によって
隅田川の西側、いわゆる川こっちから
川向こうに行きやすくなった江東区・森下。
すでに40年も以前のことながら
下町飲みを愛する当時の左党たちは
しめしめ、相好を崩して舌なめずりしたに違いない。

新宿線は新宿から真西に走る京王線と相互乗り入れしている。
先日も当ブログで綴ったばかりだが
京王線とはなぜか縁が薄いわが身である。
早いハナシが過去において
沿線に親しい友人も愛しい恋人もいなかったことの証し。
訪ねる機会に恵まれなかったんだねェ。

京王線がダメでも新宿線があるサ。
新宿から千葉県・市川市の本八幡まで全21駅。
そのすべての駅に降り立っている。
そしてほとんどの駅前で飲んでいる。
バッカじゃないの? ってか?
へへ、ごもっとも。
あんまり自慢できるハナシじゃありやせん。

さてさて最近出逢ったのみとも・H谷サンと待合せた森下だ。
時間を15時45分としたのは
最初に行く予定の「魚三酒場 常盤店」が16時オープンだから。
多彩な鮮魚の品揃えを誇って、なおかつ廉価。
地元のみならず遠方からも呑ん兵衛たちが遠征して来る。
よって早めに仕掛けないと止まり木に止まり損なうのだ。

森下駅A7出口に相方の姿なく、門仲方面に目を凝らせば、
ややっ! 行列らしき人々が望見されるじゃないか!
こりゃこんなところでモタモタできないぜ。
走りはしないが少々急ぎ足で店舗に向かった。

列を成す人々はすでに十余名。
最後尾に廻ってしばらくすると、
開店5分前にH谷サンが到着した。
後列の客にペコペコ頭を下げて
何とか割り込ませてもらっちゃってる。
なかなか愛嬌のある人物なのだ。
まっ、そうでなきゃついこの間まで
赤の他人だったオッサンと一緒に飲みには出ないわな。

16時を回ること約3分。
ようやく引き戸が引かれて暖簾が出された。
列の一同、一様にホッコリ笑顔でゾロゾロゾロ。
店内には細長いコの字カウンターが二つ。
いったい何人入れるんだろう?
40人くらいかな?
行列はすべて収まって、あとは数席を残すのみである。

=つづく=