2018年3月13日火曜日

第1826話 江戸のはずれの江戸川区 (その4)

店全体が鰹出汁と醤油で煮しめられたような「カネス」。
この味わいは似非レトロのチェーン居酒屋なんかが
一朝一夕に醸せるものではけっしてない。
ここは江戸のはずれの江戸川区、
最寄りの一之江駅から徒歩十数分の距離にある。

グラスを上げ下げするピッチがガクンと落ちた。
「伊勢周」の酎ハイが利いてきた。
まっ、しばらくスローダウンしたあと、
徐々に復調していくんだけどネ。

実を申せば当店訪問の狙いはラーメン。
昭和の頃の支那そばみたいな素朴なラーメンだ。
前回食べて意想外の美味しさに驚いた。
よって、今回はワンタンを加えたワンタンメンを試したい。
さりとて、だしぬけに麺類は気が引ける。
どちらも軽めのイナゴの佃煮と湯豆腐を通す。

イナゴ? 何だってそんなモン?
いぶかしがる読者の気持ちはよおく判る。
でもネ、昨今は海外でも注目を集める昆虫食。
スイスだったかな?
昆虫を粉末にしてクラッカーに混ぜ込むらしい。
オトコの強壮のみならず、
オンナの美容にも効果があるそうだ。

そうしておいてワンタンメンを締めとしたらしい。
”らしい”と曖昧な表現をあえて使うのは
このあたり、記憶が飛んじゃっているから。
おそらく1杯のどんぶりをシェアしたのだろうが
麺をすすったのは覚えちゃいるが
ワンタンはつまんだかな?

翌日、相方に確認してみると、間違いなく食べてたとのこと。
ついでに「カネス」に居たときが一番酔って見えたんだとサ。
そうだったんだァ。
近頃、酒が弱くなったのかなァ。
少々、自信に揺らぎを感じてしまう。

「カネス」をあとにして目の前のバス通り、
今井街道を都営新宿線・一之江駅方面に歩く。
よせばいいのにあわよくば、
駅周辺でもう1軒という腹積もりだ。

北西から南東に走る街道を
真っ直ぐ行くと、駅に到達するが
大通りを嫌い、脇道に入ったせいで
新大橋通りに出ちゃったヨ。
船堀・一之江の真ん中あたりと思われた。

道行くチャリンコのオバさんに訊いたら
船堀のほうが近いんだと―。
結局は薬局、振り出しに戻っちまったわけだ。

「大衆酒場 カネス」
 東京都江戸川区一之江6-19-6
 03-3651-0884