2018年3月16日金曜日

第1829話 雛祭りの夜 (その1)

    ♪ 泣かない約束を 
    したばかりなのにもう涙
    ひとりでお祭りの人ごみを逃れて
    紅い鼻緒がなぜかうらめしくて
    あの人あの町に行っちゃうなんて
    今日はじめてきかされたの
    遠い笛太鼓

    恋人どうしなんて
    まだいえない二人だけれど
    いつしか心に決めていた人だった
    線香花火がなぜか目に浮かぶの
    あの人あの町で働くなんて
    祭りの歌が手拍子が
    胸につきささる        ♪

       (作詞:安井かずみ)

小柳ルミ子の「お祭りの夜」は1971年9月のリリース。
デビュー曲「わたしの城下町」に続くシングル第2弾は
前曲同様、安井かずみ&平尾正晃のコンビによる。
詞・曲ともに大好きなナンバーで
目をつぶって聴いていると、
祭りの情景が手に取るように浮かんでくる。
流行歌は常にこうあってほしい。

おっと、その日は3月3日。
祭りは祭りでも雛祭りであった。
旧知のたべともと落ち合ったのは
台東区・入谷、地番は北上野の和食店「あかぎ」。

ここ数年、エリアでの人気上昇は急なものがあると聞いた。
電話予約を入れると、最近はコース主体の提供となった由。
ともに大食漢ではないから、ここでちょいとヘジテイトしたが
もっとも軽い構成のおつまみコース(3000円)をお願いしておく。

リクエストしたカウンター席に。
カウンターはたったの5席しかない。
ラッキーではあった。
料理人の一挙手は一目瞭然。
しかし一投足までは目が届かない。
瓶ビールを満たしたグラスを合わせた。

初っ端の3種前菜盛合せは
青大豆醤油仕立て・卯の花・春筍塩麹和え。
ふむ、フム、まあ、フツーかな。
別段、驚きはないし、舌が歓ぶ様子もない。

続いての吸いものはよかった。
蛤のみぞれスープと称するのだそうだ。

蛤のふたみに別れ行く秋ぞ

芭蕉の「おくの細道」、その結びの一句は
蛤の蓋身と、ここから向かう伊勢・二見浦(ふたみがうら)を
巧みに掛けている。
芭蕉師匠、さすがでありますな。

=つづく=